金属概論:金属の基礎

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  【金属利用の歴史】

 イランで発見された紀元前9500年頃の銅製ペンダントが,金属利用の始まりと考えられている。発見されたペンダントは,天然の純銅をそのまま利用したものであったた。
 
 紀元前2000頃のエジプトの壁画に足踏みふいごと鋳型が登場していることから,酸化物から金属を得る製錬技術は,このころに開発されたと考えられている。
 
 酸化鉄を加熱・還元して鉄を得る精錬技術は,紀元前1650年頃のヒッタイトで始められたとの説がある。この製鉄技術は,約200年以上秘匿されていたが,ヒッタイトの滅亡とともに広まったと考えられている。
 当初の金属精錬技術は,武器製造を目的としていたが,技術の普及とともに,農耕器具や生活用品に用いられるようになった。
 
 18世紀以前に活用されていた金属は,金,銀,銅及び鉄などの11種類程度であったが,18世紀から19世紀にかけての産業革命で,新たな金属が続々と発見・利用されるようになった。

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  【日本の製鉄技術】

 日本での鉄の利用,製鉄技術の変遷について,日立金属(株)「たたらの話」,明治大学佐野研究室「製鉄技術史のための基礎知識」,世界遺産協議会 『明治日本の産業革命遺産』を参考にその概要を紹介する。
 鉄の伝来
 日本では紀元前 3 世紀ころの縄文時代(~ 4世紀)には大陸から伝来した鉄器を使用していたと考えられている。弥生時代(紀元前 4世紀~紀元 3世紀中ごろ)に入ると稲作農耕の広がりにより,青銅器の他に朝鮮半島との交易で入ってきた鉄器が使われるようになった。紀元前後の弥生時代中期には鉄器が急速に普及した。
 弥生時代中期までは,朝鮮半島から輸入された鉄器のみであったが,その後の鉄器の普及に伴って,日本においても輸入した鉄の加工が始まったとされているが,鉄そのものを製造する製鉄技術が導入されるまでには至っていなかったと考えられている。
 
 たたら製鉄(tatara)
 古墳時代(紀元 3世紀中ごろ~ 7世紀)の中期には,朝鮮半島を経由して“製鉄(iron manufacture)”の技術が伝来し,飛鳥時代(紀元 6世紀~ 8世紀)には,鉄鉱石や砂鉄,木炭を原料とする“製鉄”が広く普及したと考えられている。当初の製鉄は自然風を用いた方法であったが,間もなくして強制的に送風する“たたら製鉄”に進化した。なお,“たたら製鉄”とは,“たたら”と呼ばれる炉に空気を送り込むための“ふいご”に因んで命名された。
 室町時代( 1336年~ 1573年)後半から戦国時代には,増加した刀の需要に応えるため,炉の大型化,ふいごの改良(往復足踏み式)が進み,生産量が大幅に伸びた。
 江戸時代( 1603年~ 1868年)には,市民生活で用いられる鉄の需要が増えた。また,天秤ふいごの発明などにより,より高い温度( 1200℃~ 1300℃)が得られるたたら製鉄技術が確立された。
 江戸末期(幕末)から明治時代( 1868年~ 1912年)になると,大型大砲,蒸気機関,船舶などの需要に応えられる洋式製鉄(反射炉)の導入が進み,たたら製鉄は衰退していった。
 
 洋式製鉄技術の導入
 1600年代後半には,イギリスで反射炉の技術が開発されている。日本では,江戸末期に長崎警護の任にあった佐賀藩(鍋島藩)藩主の鍋島直正が欧米の脅威に備えるため,西洋技術の導入を計り,1850年に日本初の反射炉(reverberatory furnace)を造り洋式砲の鋳造を始めた。
 その後,1853年にペリーが率いるアメリカ合衆国海軍東インド艦隊の日本(浦賀)来航事件(いわゆる黒船来航)を契機に,欧米諸国からの脅威に備えるため,大型船の建造や洋式大砲の製造に向けた早急の技術転換(産業革命)が図られ,1950年代にオランダの技術本を元に国内に 11基の金属溶解炉が建設された。
 1857年(安政4年)12月1日(旧歴)に南部藩(岩手県)釜石で日本初の洋式高炉(blast furnace)を操業させた。なお,1957年に日本鉄鋼連盟が,炉に初めて火が入った 12月1日を「鉄の記念日」と定めた。
 1887年に創立された釜石山・田中製鐵所は,1894年に日本初のコークスによる銑鉄製造に成功した。
 1901年に筑豊炭田近くの八幡村(現北九州市)で,日本最初の大型高炉(160トン)を持つ官営八幡製鐵所が操業開始した。
 
 鉄の生産プロセス
 近代のコークス高炉法による鉄の生産プロセスは,基本的にはたたら製鉄と同様の原理である。すなわち,たたら製鉄では,砂鉄や鉄鋼石と木炭を交互に入れ,木炭から発生する一酸化炭素で鉄酸化物を還元して炭素を含む鉄を得る。コークス高炉では,鉄鉱石とコークスを交互に入れコークスから発生する一酸化炭素の還元力を用いて炭素を含む鉄を得る。
 たたら製鉄では炉の下に溜まった鉄の塊をその都度取り出さなければならないが,高炉では原料の連続投入が可能で,溶解した鉄を連続的に取り出すこと(大量生産)ができる点に大きな違いがある。
 炉内では,木炭やコークスの燃焼による一酸化炭素( CO )の生成と一酸化炭素による鉄鉱石中の鉄酸化物( Fe2O3 など)の還元反応が起きる。
 この過程で起きている主な反応は次のように考えられている。
 ● コークスの燃焼(炭素の酸化)による一酸化炭素の生成
      2C + O2 → 2CO
      2C → 2C2+ + 4e-  , O2 + 4e- → 2O2-
 この他に,C + O2 → CO2 , CO2 + C ⇆ 2CO の反応も起きている。
 
 ● 鉄鉱石の還元による鉄の生成
 酸化鉄(Ⅲ)(酸化第二鉄,ヘマタイト Fe2O3 )の還元による鉄( Fe )の生成は,多段階を経て起きる。
 1)酸化鉄(Ⅲ)が四酸化三鉄( Fe3O4 )に還元される。(比較的低温 320 ℃~ 620 ℃)
 この過程では,一酸化炭素(還元剤)が酸化され二酸化炭素になる。
      3Fe2O3 + CO → 2Fe3O4 + CO2
      鉄の酸化数:( +3 ) → ( +2 ) , ( +3 )   Fe3O4 = Fe(+2)O・ Fe(+3)2O3
      炭素の酸化数:( -2 ) → ( -4 )
 2)四酸化三鉄が酸化鉄(Ⅱ)(酸化第一鉄,ウスタイト FeO )に還元される。( 620 ℃~ 950 ℃)
 この過程では,一酸化炭素(還元剤)が酸化され二酸化炭素になる。
      Fe3O4 + CO → 3FeO + CO2
      鉄の酸化数: ( +2 ) , ( +3 ) → ( +2 )
      炭素の酸化数:( -2 ) → ( -4 )
 3)酸化鉄(Ⅱ)が鉄( Fe )に還元される。( 950 ℃~ )
 この過程では,一酸化炭素(還元剤)が酸化され二酸化炭素になる。
      FeO + CO → Fe + CO2
      鉄の酸化数: ( +2 ) → ( 0 )
      炭素の酸化数:( -2 ) → ( -4 )
 
【参考資料】
 1) 東北大学金属材料研究所 『金属材料の最前線』 講談社,2009年
 2) 明治大学佐野研究室 『技術の歴史』
 3) 世界遺産協議会 『明治日本の産業革命遺産』

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