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 鉄及び鋼

 鉄鋼の基礎

 鉄と炭素のみで構成された鋼を 2元系合金という。2元系合金は,炭素含有量と温度に応じて種々の状態になることは,古くから研究され,鉄‐炭素系平衡状態(Fe−C系状態図,iron carbon equilibrium diagram)として整理されている。

鉄‐炭素系平衡状態図

鉄‐炭素系平衡状態図
出典:田中良平「最近の鉄-炭素系平衡状態図について」鉄と鋼, Vol.53, pp.1586-1604(1967)

 鋼の性質を左右する要因は,鉄の相に炭素が溶け込んだ固溶体(solid solution),介在物として生成されるグラファイト(graphite)(黒鉛)やセメンタイト(cementite,Fe3C)の量と分布状態である。なお,鉄の中に炭素が均一に分散することを固溶するという。
 純鉄の結晶構造は,低温側からα鉄(体心立方格子),γ鉄(面心立方格子),δ鉄(体心立方格子)と変化(相の状態変化)する。

 固溶できる炭素の量は温度によって変化し,α鉄の温度領域では最大 0.02%まで固溶できる。この状態の合金をフェライト(ferrite)という。
 γ鉄の温度領域では約 2.14%までの炭素が固溶できる。この合金をオーステナイト(austenite)と呼ぶ。高温域では 0.1%までしか炭素を固溶できず,デルタフェライト(δ-ferrite)という。
 それぞれの相に固溶している炭素は,温度が変化(低下)すると鉄と共有結合した炭化物のセメンタイトとして析出する。セメンタイトの形態は冷却速度などの処理条件によって大きく変化し,鉄鋼材料の機械的性質に大きく影響する。
 
 これらの各状態,化合物の特徴は,次の通りである。
 フェライト(ferrite):α-Feに炭素(C)を僅かに固溶した組織で,やわらかく摩耗には弱いがねばく,展延性に富んでいる。常温では強磁性体である。
 オーステナイト(austenite):Fe-C系合金において普通723°C以上の高温度でだけ存在する組織で,やわくかくねばい性質を持っている。
 パーライト(pearlite):炭素を含む鋼のオーステナイトが,ある特定の条件で,微細なフェライトとセメンタイトの薄片層状に共析した組織をいう。この組織を持つ鋼をパーライト鋼(pearlitic steel)や共晶鋼(eutectoid steel)などと呼び,機械的にはねばり強く耐摩耗性に優れレールなどに用いられる。
 セメンタイト(cementite):鋳鉄や普通鋼に含まれている鉄の炭化物 Fe3C をいう。結晶の形は斜方晶系に属する。セメンタイトは,かたくてもろい金属化合物で,延びがぼとんどなく,板状の割れやすい結晶として存在する。
 【参考】
 気体,液体,及び固体(三態)は,温度や圧力を変えることで,物質の状態は相互に変化(相転移)する。
 相図(phase diagram)
 物質などの相と熱力学的な状態量(温度,圧力など)との関係を表したもので,状態図ともいわれる。相図には,合金や化合物の温度,圧力,組成に関する相図,磁気構造と温度との関係を示す相図など様々ある。
 物質の三態と温度,圧力の相図では,液相と固相の境界を融解曲線,気相と固相の境界を昇華圧曲線(昇華曲線),気相と液相の境界を蒸気圧曲線(蒸発曲線)という。

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