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 鉄及び鋼

 建築構造用圧延鋼

 SN材と呼ばれる JIS G 3136 建築構造用圧延鋼材(Rolled steels for building structureは,SM材(溶接構造用圧延鋼材)と同様に熱間圧延鋼材である。しかし,建築構造物用途では,一般の鋼構造物とは異なる要求性能に対応するため,塑性変形能力の高い鋼材が規定されている。
 
 SM材は,1952年に JIS規格化されたのに対し,SN材は鉄骨造建築物に求められる耐震性や溶接性に特化した建築構造専用の JIS規格として 1994年に制定された。この結果として,SS材及び SM材の JIS規格の適用範囲から建築用途が削除されている。
 
 SN材の種類は,SM材と同様に A種・B種・C種の 3種である。B・C種にはシャルピー衝撃試験の規定がある。また,大地震時に想定される崩壊形を実際のものに近づける目的で,降伏点のばらつきを抑える規定もある。


建築構造用圧延鋼材(SN材)の例
  記号    種類    厚さ 
  mm 
化学成分(%) 引張強さ
N/mm2
C SiMn P S
  SN400    A    6≦t≦100    ≦0.24    ―    ―    ≦0.050    ≦0.050    400~510 
  B    6≦t≦50    ≦0.20    ≦0.35    0.60~1.40    ≦0.030    ≦0.015 
  50≦t≦100    ≦0.22 
  SN490    B    6≦t≦50    ≦0.18    ≦0.55    ≦1.60    490~610 
  50≦t≦100    ≦0.20 

 塑性変形(plastic deformation)
 固体材料に加わる力がある限度より小さい場合は,力を除去することで元の形に戻る。この力の範囲を弾性範囲という。弾性範囲を超える外力が加わると,力を除去しても元の形に回復しない。この性質を塑性(そせい)や可塑性(かそせい)といい,変形を塑性変形という。
 多くの金属材料は金属組織の層状のすべりによって塑性変形する。これを利用した金属材料の圧延,鍛造,押出加工,引抜加工,プレス加工などの塑性加工により,曲線を持つ製品など優れた意匠(design)の製品が得られる。

 シャルピー衝撃試験(Charpy impact test)
 金属材料に衝撃を与えて,吸収されるエネルギーを決めるシャルピー衝撃(Vノッチ及び Uノッチ)試験方法は,JIS Z 2242「金属材料のシャルピー衝撃試験方法:Method for Charpy pendulum impact test of metallic materials」に規定する方法を用いるのが一般的である。
 試験方法の原理
 振子の一振りによって,ノッチを付けた試験片を破断するときに吸収されたエネルギーを求めて評価する。吸収されたエネルギーは,振り子の初期の位置エネルギーと破断後の振り子の位置エネルギーとの差から求められる。
 なお。試験片のノッチ部分は,指定された形状をもち,試験時に衝撃方向と反対に位置する二つの受け台の中心に置かれる。多くの金属材料の衝撃値は,試験温度によって変化するため,試験は指定された温度で行う。その温度が室温でない場合は,試験片は,その温度に管理された状態で加熱又は冷却しなければならない。
 
 【参考資料】
 1)谷野満,鈴木茂「鉄鋼材料の科学―鉄に凝縮されたテクノロジー」内田老鶴圃(2006)
 2) 大澤直 『金属のおはなし』 日本規格協会,2008年
 3) 齋藤勝裕 『金属のふしぎ』 ソフトバンククリエイティブ,2009年

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