金属概論:鉄および鋼

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  【鋳鉄】

 鋳鉄(cast Iron)は,炭素(C)を2%以上含む鉄製品である。金属学的には,鉄に炭素およびケイ素(Si)を含む三元系の合金となる。一般的には鉄を使った鋳物製品やそこに用いられている材料を鋳鉄という。

 鋳鉄は,炭素含有率が高いので,鋼より溶融温度が低く,鋳造しやすいという特徴がある。また,鋳鉄中の炭素は固まるときに膨張するため,全体として,製品の体積収縮を補うことができることも特徴として挙げられる。
 通常,鋳鉄が固まるときに炭素が結晶化し,裂け目状,又はサツマイモ状のグラファイト(graphite:石墨・黒鉛)となる。このため,応力がグラファイトに集中しやすくなり,脆いことが最大の弱点といわれている。この欠点を補うために開発されたものに,次に解説する球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)がある。
 
 通常の鋳鉄は,炭素の状態によって“ねずみ鋳鉄(gray cast iron)”,“白鋳鉄(white cast iron)”,“斑(まだら)鋳鉄”の3つに分けられる。
 ねずみ鋳鉄は,炭素が片状のグラファイトで存在する破断面がねずみ色の鋳鉄で,振動を吸収する能力(減衰能)に優れている。
 白鋳鉄は,鉄と炭素の化合物であるセメンタイト(Fe3C;cementite)が析出し,破断面が白い鋳鉄である。
 斑(まだら)鋳鉄は,ねずみ鋳鉄と白鋳鉄の混合型をいう。

 JIS G 0201「鉄鋼用語(熱処理)」では,片状黒鉛(graphite flake, flake graphite)を“ねずみ鋳鉄中に生じる片状の黒鉛をいう。備考:ばら状黒鉛(graphite rosette),共晶黒鉛(eutectic graphite)もこれに含まれる。”と定義され,球状黒鉛(spheroidal graphite, nodular graphite)を“マグネシウムなどで処理して製造した球状黒鉛鋳鉄に生じる密な球状の黒鉛。”と定義している。


主な鋳鉄品の JIS規格
 規格番号  規格名称
  JIS G 5101    炭素鋼鋳鋼品(Carbon steel castings)
  SC材と記される。
  JIS G 5102    溶接構造用鋳鋼品(Steel castings for welded structure)
  SCW材と記され,圧延鋼材,鋳鋼品又は他の鋳鋼品との溶接構造に用いるもので,特に溶接性に優れた鋳鋼品
  JIS G 5121    ステンレス鋼鋳鋼品(Corrosion-resistant cast steels for general applications)
  SCS材と記される。
  JIS G 5151    高温高圧用鋳鋼品(Steel castings for high temperature and high pressure service)
  SCPH材と記され,高温で使用される弁,フランジ,ケーシングその他の高圧部品用鋳鋼品
  JIS G 5152    低温高圧用鋳鋼品(Steel castings for low temperature and high pressure service)
  SCPL材と記され,低温で使用される弁,フランジ,シリンダその他の高圧部品用鋳鋼品
  JIS G 5201    溶接構造用遠心力鋳鋼管(Centrifugally cast steel pipes for welded structure)
  SCW材と記され,圧延鋼材,鍛鋼品又は他の鋳鋼品との溶接構造に用いる特に溶接性の優れた,管の厚さ 8mm以上 150mm以下の溶接構造用遠心力鋳鋼管(鋳鋼管)
  JIS G 5501    ねずみ鋳鉄品(Grey iron castings)
  FC材と記され,片状黒鉛をもつ鋳鉄品
  JIS G 5502    球状黒鉛鋳鉄品(Spheroidal graphite iron castings)
  FDC材と記される球状黒鉛鋳鉄
  JIS G 5526    ダクタイル鋳鉄管(Ductile iron pipes)
  地中又は地上に配管し,圧力下又は無圧力下で水の輸送などに使用するダクタイル鋳鉄管
  JIS G 5705    可鍛鋳鉄品(Malleable iron castings)
  熱処理をした鉄−炭素合金であり,鋳放し状態で黒鉛を含まない白銑組織をもつ鋳鉄品

 ダクタイル鋳鉄(ductile iron , ductile cast iron)とは,組織中のグラファイト(黒鉛)の形を球状にして強度や延性を改良した鋳鉄である。 「ダクタイル」 とは 「強靭な」 という意味の形容詞である。黒鉛の形状から球状黒鉛鋳鉄(spheroidal graphite cast iron),ノデュラー鋳鉄(Nodular graphite cast iron)とも呼ばれる。
 
 【参考資料】
 1)谷野満,鈴木茂「鉄鋼材料の科学―鉄に凝縮されたテクノロジー」内田老鶴圃(2006)
 2) 大澤直 『金属のおはなし』 日本規格協会,2008年
 3) 齋藤勝裕 『金属のふしぎ』 ソフトバンククリエイティブ,2009年

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