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 亜鉛めっき鋼

 溶融亜鉛めっき

 言葉どおり,溶融している亜鉛(融点約430℃)浴の中に鋼板を浸漬させ,表面張力で鋼板表面に亜鉛を付着させ,鋼板との温度差を利用し亜鉛を凝着させる方法である。
 溶融亜鉛めっきでは,付着した亜鉛層の凝固・冷却の間に,鉄原子が鋼表面から移動し,亜鉛と鉄の合金層が界面に形成する。
 亜鉛の付着量(めっき厚み)は,亜鉛浴への浸漬時間や引き上げた後のエアーワイピング(圧搾空気を用いて吹き飛ばす)などの物理力でコントロールできる。
 JIS H8641;1999「溶融亜鉛めっき」には,標準的な溶融亜鉛めっき作業工程として,次の工程を紹介している。具体的な作業については,(一般社団法人)溶融亜鉛鍍金協会「溶融亜鉛めっきの加工工程」が参考になる。なお,2007年に改定された JIS H8641 には,作業工程の記述はない。

  1. 鋼材表面の脱脂(10%アルカリ溶液槽)
     めっき素材を,加温した苛性ソーダ(NaOH)水溶液に漬けて,表面に付いている油脂類などの汚れを完全に除去する。
  2. 水洗
     素材表面に付着している脱脂液を洗い流す。
  3. 酸洗(7~10%硫酸溶液槽)
     めっき素材を塩酸または硫酸水溶液に漬けて,表面のさび,スケールなどの酸化物を除去し鉄素地を露出させる。
  4. 水洗
     素材表面に付着している酸洗液を洗い流す。
  5. フラックス処理(飽和塩化亜鉛アンモニウム溶液槽)
     酸洗後のさびの発生を抑え,鉄と亜鉛の合金反応を促進させるため,加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に漬けて素地表面にフラックス皮膜を形成させる。
  6. 乾燥
     スプラッシュ(亜鉛の飛散)を抑えるために乾燥させる。
  7. めっき(440~460℃液体亜鉛槽)
     めっき素地を溶融した亜鉛浴の中に漬けてめっき皮膜を形成させる。めっき素材の材質や形状寸法などに応じて最適のめっき条件を選択する。
  8. 冷却(温水槽もしくは空冷)
     めっきされた製品を冷却する。この冷却によって,鉄と亜鉛の合金層の不必要な成長を抑制する。
 めっきされた鋼材表面には,亜鉛の結晶による斑模様(スパングル;spangle)が現れることがある。めっきの防食性に悪影響を与えないが,欠陥と勘違いされることがある。
 この方法の長所としては,鋼板を亜鉛の融点まで加熱するため,焼鈍工程とめっき工程をひとつの設備で同時に行う事ができること,亜鉛めっき層の厚みを厚くしたい場合には有利なことが挙げられる。
 自動車用鋼板に用いられている「合金化溶融亜鉛めっき」など自動車ボディへの用途が最も多く,家電や建材などにも一部使われている。建材のいわゆる「トタン」はこの方法で作られ,「スパングル」という亜鉛の結晶が浮き出すような作り方をしている。
 亜鉛の付着量,均一性などの品質試験は,JIS H0401「溶融亜鉛めっき試験方法」に従って実施される。
 溶融亜鉛めっき面の不具合と補修方法
 施工時の傷補修や検査で不合格となった“めっきの欠陥部分”の補修は特記により実施されることが多い。特記がなければ,一般的には下表により実施される。

溶融亜鉛めっき面の不具合と補修方法
欠陥の説明は「基本用語」参照
 欠 陥    補修方法 
  不めっき 又は傷    局部に欠陥が点在する場合は,ワイヤーブラシで入念に素地調整を行った 後,高濃度亜鉛末塗料(金属亜鉛末を90% 以上を含むもの,
ジンクリッチペイントJIS規格品より高濃度を規定)2回以上塗布する。なお,欠陥部が広範囲にわたる場合は,再めっきを行う。
  かすびき   やすり,又はサンダー掛けにより平滑に仕上げる。
  接合部のたれ   ボルト孔,及び摩擦接合面縁に生じたたれは,やすりを使って除去する。

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