腐食概論金属概論

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 ここでは, 【鋳造材(砂型・金型鋳物用)】, 【鋳造材(ダイカスト用)】 を紹介する。

 アルミニウム合金

 鋳造用アルミニウム合金は,適用する鋳造法によって要求特性が異なるため,鋳造法別に分類される。大きくは,砂型や金型鋳物用の合金とダイカスト用の合金に分けられる。参考資料 1) ,JIS H 5202 「アルミニウム合金鋳物: Aluminium alloy castings 」を参考に主な材料を紹介する。

 鋳造材(砂型・金型鋳物用)

 鋳型に溶湯(溶解したアルミニウム)を鋳込む際,人為的な圧力を加えないので,重力鋳造法と呼ばれる。次に示す合金種により鋳造性,強度,耐摩耗性,高温強さなどの特性が異なる。
 
 Al-Cu-Mg 系合金 ( AC1B )
 靱性,切削性,電気伝導性にすぐれ,架線など導電部品,自転車用,航空機などの油圧部品などに用いられる。
 耐食性に劣るため,腐食環境での使用には適さない。
 
 Al-Cu-Si 系合金 ( AC2A, AC2B )
 Cu の添加量を減らし,靱性を若干犠牲にするが,Si 添加で鋳造性を改善した合金で,自動車などの小型エンジン部品に用いられる。
 
 Al-Cu-Ni-Mg 系合金 ( AC5A )
 高温での硬さ保持を目的に改善した合金で,耐食性は劣るが切削性や耐摩耗性に優れ,レコーダのドラムなど精密加工を要する摺動部品,シリンダーヘッド,ピストンなどに使用される。
 
 Al-Si 系合金 ( AC3A )
 Si だけを合金元素として添加したもので,強度は高くないが,鋳造性に優れ,大きな伸び,小さい熱膨張係数,良好な耐食性を持つ。薄肉で複雑な形状や模様の実現が可能で,大きな強度を必要としない門扉やカーテンウォールなどに用いられる。
 
 Al-Si-Mg 系合金 ( AC4A, AC4C, AC4CH )
 Al-Si 系合金の Si 量を減らし,Mg を少量添加し,鋳造性を維持したまま機械特性を改善した合金である。主な用途には,エンジン部品,車両部品,船舶用部品などが挙げられる。
 AC4CH 合金は AC4C 合金より不純物に対する品質管理を厳密にし,保安的要求の高い自動車用ホイールなどの用途を意図したものである。
 
 Al-Si-Cu 系合金 ( AC4B )
 Al-Si 系合金の Si 量を減らし,Cu を添加した合金で,鍛造性を維持したまま強度を高めたもので,自動車,電気機器,産業機械部品などで広く用いられる。ただし,Cu の添加で耐食性が劣る。
 
 Al-Si-Cu-Mg 系合金 ( AC4D )
 Al-Si-Mg 系 AC4C 合金の Si 量を若干下げ,Cu を添加した合金で,耐圧性,耐熱性に優れ,自動車エンジンなどのシリンダーブロック,クランクケース,油圧機器部品などに用いられる。
 
 Al-Si-Ni-Cu-Mg 系合金 ( AC8A, AC8B, AC8C )
 エンジンのピストン用途に適するように,Al-Cu-Ni-Mg 系合金の Cu 量を半減させ Si 添加量を大幅に増やし,小さい熱膨張係数,高い耐摩耗性を持つ剛性の高い合金である。自動車,ディーゼル機関車用ピストン,プーリー,軸受などに使用される。
 
 Al-Si-Cu-Mg-Ni 系合金 ( AC9A, AC9B )
 Si量が最も多く,AC9A 合金で 23%,AC9B 合金では 19%の Si を含有している。AL-Si-Ni-Cu-Mg 系合金より熱膨張係数が小さく,2 サイクルエンジン用ピストン,空冷シリンダーやディーゼルエンジン用ピストンなどに使用される。
 
 Al-Mg 系合金 ( AC7A )
 代表的な耐食性合金である。強さ,伸び,切削性に優れ,熱処理による改質が可能な合金で,架線金具,船舶用品,建築金具,事務機器部品などに用いられる。この合金は,鋳造性が低い欠点がある。

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 鋳造材(ダイカスト用)

   溶湯(溶解したアルミニウム)を加圧し,金型に高速で注入するダイカスト(die casting)に用いられるアルミニウム合金である。この合金には,溶湯の高い流動性,金型への焼付きし難い特性が求められる。
 ここでは,JIS H 5302「アルミニウム合金ダイカスト:Aluminium alloy die castings 」を参考に主なものを紹介する。
 ダイカストは,大量生産に適しているが,溶湯を高速で射出注入するため,空気を巻き込み易いため,熱処理に適さない(空気によりブリスターと呼ばれる内部欠陥を発生)。また,速い冷却速度で成形(急冷凝固)されるため,金属組織の調整が困難であるため,高い機械的性質の製品を得るのが難しい。
 
 Al-Si 系合金 ( ADC1 )
 砂型・金型鋳物用の AC3A と同等の組成で,鋳造性と耐食性がよい。高い強度を要求しない薄肉・複雑形状の鋳物に適しているが,実用例は少ない。
 
 Al-Si-Mg 系合金 ( ADC3 )
 砂型・金型鋳物用の AC4A と同等の組成で,機械的性質と耐食性は容易が,実用例は少ない。
 
 Al-Si-Cu 系合金 ( ADC10, ADC10Z, ADC12, ADC12Z )
 砂型・金型鋳物用の AC4B に相当する合金で,多量の Si 添加,Cu の添加で鋳造性と強度を高めた合金である。ダイカスト用合金の中では鋳造性に優れた高力合金として,自動車エンジン部品,電気機器部品などで使用されている。
 
 Al-Si-Cu-Mg 系合金 ( ADC14 )
 エンジンブロックの軽量化を目的の開発された合金で,強度,耐摩耗性に優れ,熱膨張係数が小さいため,自動変速機用オイルポンプボディ,ハウジングクラッチなどに使用されている。
 
 【参考資料】
 1)(社)日本アルミニウム協会「アルミニウムハンドブック(第6版)」(2001)など

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