鉄道橋の維持管理

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 【措置の概要】

 措置とは,検査結果を受けて,構造物の健全度を判定し,その結果を受けて計画・実施される監視,補修・補強,使用制限,改築・取替などの行為である。ここでは,各措置の概要を紹介する。

  (1) 監視
 監視は,一般に健全度Bと判断された構造物および健全度Aと判断された構造物で,監視以外の措置をとるまでの間,もしくは監視以外の措置を実施した後の当分の間に行う措置である。
 監視は,検査員や補助者の目視以外にも,信頼性が確認されていれば,例えばモニタリングシステム等を用いて異常を検知する手法も有効な手段となるので,詳細な目視が困難な個所の監視方法とし活用することができる。

  (2) 補修・補強
 補修・補強は,性能の維持・回復または向上を目的として実施される。補修・補強の方法は,検査結果および構造物の重要度,施工性,施工時期等を考慮して検討される。
 なお,構造物に変状が生じていなくても,要求性能の変化に対応して補強が必要になる場合がある。例えば,耐震基準変更に伴う耐震性向上のための補強工事,列車の速度向上や荷重の増大などに伴う耐荷性を向上のための補強工事などが該当する。
 補修の要否判断や計画する場合に,変状の内容,変状原因は千差万別であるが,それぞれに適切な補修方法を採用することが求められる。このためには,多くの経験に裏打ちされた判断も必要となる。個々のケースで対応が異なるが,ここでは,参考のため代表的な変状に対する補修方法の一例を紹介する。
 補修の例として,塗膜劣化・摩耗が生じている場合の補修,橋梁連結部に不具合が発生している場合の補修,局部的な腐食が生じている場合の補修,金属疲労による損傷が発生している場合の補修および支承部(橋梁と橋脚・橋台を結ぶ部位)の変状に対する補修に分けて下表に示す。


塗膜劣化・摩耗が生じている部位の補修方法
  変状の内容    変状原因の推定   補修方法の例
  塗膜の劣化   経年による塗膜の劣化   塗膜の劣化状態に基づき塗装の塗替えを行う。
 予防保全の観点から,適切な耐久性の塗装を用いるのが望ましい。
  既設塗装との相性やケレンの程度にも十分な注意を要する。
  異常な錆の発生   無塗装橋梁の場合に,漏水や飛来塩分による層状はく離錆やうろこ状錆の発生   素地調整後に耐久性のある塗装を施す。
  予防保全の観点から桁端部,部材下面に塗装を行う。
  ピン結合トラスアイバーのゆるみ   繰返し荷重の載荷によるピンやピン孔の摩耗   アイバーに拘束治具を取り付け,加熱,水冷等を繰り返す,あるいは切断するなどして部材長を短縮させることにより再緊張する。

連結部に変状が生じている部位の補修方法
  変状の内容    変状原因の推定   補修方法の例
  リベットのゆるみ   リベットに作用する引張力や振動,リベット頭やその付近の腐食   リベットを除去し,高力ボルトに交換する。
  高力ボルトの遅れ破壊   F11T以上の高強度ボルトなどで,腐食で発生する水素による水素脆化など   F10Tの高力ボルトに交換する。防護工の設置等によるボルト落下対策を行う。

局部腐食が生じている部位の補修方法
  変状の内容    変状原因の推定   補修方法の例
  下フランジの局部腐食   濡れ時間が長い,雨洗を受けにくい
  桁端では湿度が高いなどの早期の塗膜下腐食
  比較的軽微な腐食に対しては補修としての塗装を行う。
  腐食による断面欠損や孔食を伴っている場合にはフランジを部分的に交換する。
  桁端部の腐食が激しい場合には桁端部の改築を行う。
  横構,ガセット等の腐食   複雑な構造部位のため,ミクロ的に濡れ時間が長い
  通常作業では良質の素地調整程度,塗膜品質が得られないため
  比較的軽微な腐食に対しては補修としての塗装を行う。
  腐食による断面欠損や孔食を伴っている場合にはフランジを部分的に交換する。
  桁端付近の腐食が激しい場合には桁端部の改築を行う。
  ボルトの腐食   複雑な構造部位のため,通常作業では良質の素地調整程度,塗膜品質が得られないため   ボルトキャップによる防食を行う。特殊な塗装による防食を行う。
  断面欠損によりボルトがゆるんだ場合には新規ボルトに交換する。

金属疲労による変状が生じている部位の補修方法
  変状の内容    変状原因の推定   補修方法の例
  横桁腹板 切欠き部の亀裂   切欠き部の切断面の凹凸,切欠き部に接する溶接部のアンダーカット,桁支間が短く応力の繰り返しが多い
  レール継目部の近傍,下フランジが桁端まで伸びていない等の構造部位に応力集中による
  切欠き部の切断面の仕上がりが悪いもの,アンダーカット等著しい溶接欠陥が残っているもので,亀裂が極浅いものはグラインダーで仕上げる。
  亀裂はガウジング等により完全にはつりとり,当て板をする。
  横桁下フランジが伸びていない構造の場合は,当て板で主桁との取付部を補強する。
  箱桁のダイヤフラムの亀裂   特に高速列車通過時の衝撃・振動,ダイヤフラムの面外振動,リブ溶接部の応力の高繰返し等による   ストップホール工法による応急措置を施す。
 亀裂が浅く短い場合にはTIG処理,またはガウジングにより亀裂をはつる。
 補強リブを追加する。
  ソールプレートの亀裂   ソールプレートと下フランジの肌すき,支承の可動不良による。   亀裂がビードのみの場合,ガウジングで亀裂をはつり,グラインダーで仕上げる。あるいは,ソールプレートを高力ボルトで連結する。
 亀裂が下フランジ等母材まで貫通している場合には,亀裂を除去して腹板に当て板をする。支承部の可動不良の補修を行う。

支承部に変状が生じている部位の補修方法
  変状の内容    変状原因の推定   補修方法の例
  沓座の破損   支承の不当沈下,沓座の施工不良等による   沓座の打ち替え,支承の位置や高さの調整,アンカーボルトの交換を行う。
  アンカーボルトの抜け,破断   埋め込み不良によるアンカーボルトとコンクリートとの付着強度不足や
沓座の破損によるゆるみ,腐食等による破断などによる
  アンカーボルトの交換を行う。別の位置にアンカーボルトを新設する。
  支点部下フランジの亀裂   沓座の破損やソールプレートの摩耗による面外曲げ,塵埃等による   沓座の補修,ソールプレートおよび下フランジの部分的な交換を行う。


  (3) 使用制限
 使用制限は,健全度 AA,A1,A2 と判定された場合の措置である。さらに,事故・災害等で実施される場合も多い。使用制限の種類と目的を下表に示す。
 使用制限を解除する際の目安として,変状が原形に復旧した場合,より下のランクの制限が可能になった場合である。

構造物の使用制限の種類と目的
  種類    使用制限の目的
  運転停止    徐行等の措置によっても運転保安の確保が困難な場合で,安全の確保もしくは事故防止のためすべての車両に対して行う。
  入線停止    構造物の耐力・剛性が不足する場合で,徐行によってもなお運転保安上の阻害もしくは構造物に悪影響を及ぼすような車両に対して行う。
  荷車制限    構造物の耐力・剛性が不足する場合で,構造物の負担を所定の限度内に抑えるために行う。これには重連禁止,積荷制限等がある。
  徐行    徐行は次の目的で実施する。
(ⅰ) 走行の衝撃を小さくし,構造物の負担を小さくする。
(ⅱ) 軌道変化に対して走行安全性および所定の乗り心地を確保する。
(ⅲ) 車両の動揺,傾きを小さくし,走行上必要な限度を守る。
(ⅳ) 支持物を発見した場合,安全に停止できるようにする。
(ⅴ) 異常をすみやかに感知し,事故防止の措置が直ちにとれるようにする。


(4) 改築・取替
 改築・取替が必要となるのは,要求性能が変化したため補強より有利と判断された場合,変状の進展で構造物の性能が著しく低下し補修より有利と判断された場合である。
 構造物の改築・取替の判断を行うに当たり,検討すべき項目のうち主なものには,
 a)  構造物の要求性能の向上
 b)  構造物の性能低下
   (耐荷性,耐疲労性あるいは乗り心地等の低下等,構造物の性能が著しく低下している可能性)
 c) 変状の程度と数量が著しい場合
 がある。
 変状の程度と数量が著しい場合の代表的な例として以下のものがある。
 ・ ピントラスにおいて列車走行性に影響する変状が生じた場合
 ・ 溶接補強桁で溶接部に亀裂が多発した場合や,引張領域の主要部材に亀裂が生じた場合
 ・ 溶接構造の引張領域にある主要部材の首溶接等に亀裂が生じた場合

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