塗料の作業性に影響する溶剤,希釈剤
JIS K 5500「塗料用語」の用語定義の中から,塗料に用いられる希釈剤や溶剤に関する用語を抜粋しものを紹介します。なお,解説中の“参考追記:”は,JIS用語規定を分かりやすくするため,SEKIGIN担当者が追記した内容です。用語は【溶剤とは】,【溶剤の特性】,【溶剤の種類】に分けて紹介します。
なお,解説中の“参考追記:”は,JIS用語規定を分かりやすくするため,SEKIGIN担当者が追記した内容です。
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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溶剤 | solvent | バインダーを十分に溶解し,所定の乾燥条件で揮散する単一又は混合された液体。狭義では,バインダーの溶媒をいい,ほかに助溶剤(※1),希釈剤(※2)がある。本来は,蒸発速度の大小によって区分するが,沸点の高低によって,高沸点溶剤・中沸点溶剤・低沸点溶剤に分けることもある。 参考追記:(※1)助溶剤とは,それ自体は塗膜形成要素を溶解する性質はないが,溶剤に加えると溶剤単独のときより溶解力が大きくなる性質のある蒸発性の液体です。ニトロセルロースラッカーではアルコール類が助溶剤として使われます。 (※2)希釈剤とは,それ自体溶解力のある溶剤ではないが,溶剤と併用して悪影響なく使用できる,単一又は混合された揮発性液体のことです。 塗料で使用例の多い溶剤には,水,石油系混合溶剤,ミネラルスピリット,トルエン,キシレン,エタノール,ブタノール,イソプルピルアルコール(IPA),ブチルセロソルブ,ケトン,シクロヘキサン,サクサンブチル,酢酸エチルなどがある。 | K5500 |
希釈剤 | diluent (solvent) | それ自体溶解力のある溶剤ではないが,溶剤と併用して悪影響なく使用できる,単一又は混合された揮発性液体。 | K5500 |
助溶剤 | co-solvent | それ自体は塗膜形成要素を溶解する性質はないが,溶剤に加えると溶剤単独のときより溶解力が大きくなる性質のある蒸発性の液体。ニトロセルロースラッカーではアルコール類が助溶剤として使われる。 | K5500 |
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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溶剤平衡 | solvent balance | 溶剤の混合物が,溶解しているすべての溶質に対して,蒸発の全過程を通して,溶解性の均衡性を保っている状態。溶解性の均衡が保たれれば,蒸発しつくした後も溶質相互間に析出などが起こらず,塗膜は正常に形成される。 | K5500 |
アニリン点 | aniline point | 炭化水素系溶剤の溶解性を表す数値の一種。試料を等容積のアニリンと混合して冷やしたとき,互いに溶解し合えなくなって濁りが見え始めたときの温度で表す。 参考追記:JIS K 2256「石油製品-アニリン点及び混合アニリン点試験方法」アニリン点及び混合アニリン点を測定する方法について規定されています。混合アニリン点とは,アニリン2容,試料1容及びヘプタン1容が均一な溶液として存在する最低温度(アニリン,試料及びヘプタンとが完全に溶け合っている状態から温度を下げて両者が分離して濁りを生じる温度)のことです。 | K5500 |
混合アニリン点 | mixed aniline point | 炭化水素系溶剤の溶解性を表す数値の一種。体積でアニリン2,試料1,n-ヘプタン1の割合で混合して冷やしたとき,互いに溶解し合えなくなって濁りが見え始めたときの温度で表す。 JIS K 2256「石油製品-アニリン点及び混合アニリン点試験方法」石油製品のアニリン点及び混合アニリン点を測定する方法について規定されています。 | K5500 |
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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シンナー | thiner | 主にコンシステンシー(※1)を小さくする目的で,塗装の際に塗料に加える単一又は混合された所定の乾燥条件で蒸発する液体。うすめ液ともいう。 参考追記:(※1)コンシステンシーとは,液体を変形するときに起こる力学的抵抗のことです。液体の流動には,粘性流動,塑性流動,チキソトロピー,ダイラタンシーなどがあって,抵抗の状態に違いがあります。定量的には,応力-ずり速度曲線を用いて粘度,粘度変化,降伏値などで表すことができます。 | K5500 |
脂肪族炭化水素系溶剤 | aliphatic hydrocarbons (solvent) | 溶剤として用いる脂肪族炭化水素の総称。ミネラルスピリット,灯油など。 | K5500 |
芳香族炭化水素系溶剤 | aromatic hydrocarbons solvent | 溶剤として用いる芳香族炭化水素の総称。トルエン,キシレンなど。 参考追記:JIS K 2435-1「ベンゼン・トルエン・キシレン―第1部:ベンゼン」,JIS K 2435-2「ベンゼン・トルエン・キシレン-第2部:トルエン」,JIS K 2435-3「ベンゼン・トルエン・キシレン―第3部:キシレン 」,JIS K 8271「キシレン(試薬)」,JIS K 8680「トルエン(試薬)」 | K5500 |
アルコール系溶剤 | alcohols (solvent) | 溶剤として用いるアルコール類の総称。エタノール,1-ブタノール,2-プロパノールなど。 | K5500 |
エステル系溶剤 | esters (solvent) | 溶剤として用いるエステル類の総称。JIS K 1513「酢酸エチル」JIS K 1514「酢酸ブチル」など。 | K5500 |
エーテル系溶剤 | ethers (solvent) | 溶剤として用いるエーテル類の総称。ジブチルエーテル,エチレングリコール,モノブチルエーテルなど。 | K5500 |
ケトン系溶剤 | ketones (solvent) | 溶剤として用いるケトン類の総称。2-ブタノン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノンなど。JIS K 8900「2-ブタノン(試薬)」,JIS K 8463「シクロヘキサノン(試薬)」 | K5500 |
ミネラルスピリット | mineral spirits, petroleum spirits | 原油を分留して得た溶剤の一種。引火点30℃以上,蒸留試験で50%留出温度180℃以下,終点205℃以下。 JIS K 2201 参照。 | K5500 |
灯油 | 石油原油を分留して得た揮発性の液体。引火点40℃以上,蒸留性状95%,留出温度270℃以下又は300℃以下。油性塗料の希釈剤として用いることがある。 参考追記:JIS K 2203「灯油」灯油について規定されており,灯油は用途によって以下の2種類に分けられています。1号:主な用途として,灯火用及び暖房用・厨房用(ちゅう房用)燃料など。2号:主な用途として,石油発動機用燃料,溶剤及び洗浄用など。 | K5500 | |
ラッカーシンナー | lacquer thinner | ラッカー類の希釈に適する透明・揮発性の液体で,硝酸セルロース・樹脂の溶剤に希釈剤(※1)を混合して作る。JIS K 5538「ラッカー系シンナー」 参考追記:(※1)希釈剤とは,それ自体溶解力のある溶剤ではないが,溶剤と併用して悪影響なく使用できる,単一又は混合された揮発性液体のことです。 | K5500 |