経年での塗膜劣化で現れる変状(塗膜老化)

 JIS Z 0103「防せい防食用語」,JIS K 5500「塗料用語」,JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」の用語定義の中から,塗装後の経年での塗膜老化で現れる塗膜変状(割れ,はがれ,チョーキングなど)に関連した用語を抜粋し,【主として防食性に影響する変状】,【主として外観に影響する変状】に分けて紹介します。
用語 対応英訳 定義・解説 出典
老化 ageing, aging 塗膜の性質が経時的に不可逆な変化をする現象。
この経時的な変化には,劣化を意味する老化と品質向上を意味する熟成とがある。
K5500
割れ cracking 老化の結果,塗膜に現れる部分的な裂け目。
ISOでは,割れの方向性の有無,発生密度,割れの幅と深さによって評価する。JIS K 5600-8-4参照。また,割れの形態によっても区分する。
備考:ヘアクラック,わに皮割れ及びからす足状割れは,割れの形状の自明な例。塗膜に現れる部分的な割れの状態によって,次のように分ける。
程度の低いもの,浅いものから,ヘアクラック,チェッキング,クレージング,わに皮割れ,深割れ,からす足状割れ。
K5500
ヘアクラック hair cracking 最上層塗膜の表面だけに起こるごく細い割れ。形は不規則で,ところかまわず起こる。割れの項参照。 K5500
チェッキング checking 多少規則的に乾燥膜の表面に分布する微細な割れを特徴とする割れの形態の一つ。割れの深さは,上塗り塗膜の底に達していない。ISO/DIS 4618 の 図1 参照。 K5500
クレージング crazing チェッキングに似ているが,もっと深く広い割れ(ISO/DIS 4618 の図3 参照)。割れの項参照。 K5500
わに皮割れ alligatoring, crocodiling わに皮のようなパターンの広い割れ。
クレージングの激しいもの。ISO/DIS 4618の図4参照。
K5500
からす足状割れ crow's foot cracking カラスの足跡のようなパターンの割れ。ISO/DIS 4618 の 図5 参照。 K5500
深割れ deep cracks 少なくとも1層を貫通している,最終的には塗膜の完全な破壊につながるような割れ。割れの項参照。 K5500
低温割れ cold cracking 低温に曝された塗膜に起こる割れ。 K5500
はがれ peeling, flaking, scaling 付着性が失われてある広さの膜が自然に素地から分離する現象。一般に,割れ,膨れが生じた後に,付着性が失われた結果,塗装系の1層,又はそれ以上の塗膜が下層塗膜から,又は塗装系全体が素地からはがれる。はがれは,その形状,程度及び深さによって評価する。JIS K 5600-8-5「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第5節:はがれの等級」
備考:“peeling”はリボン,又はシート状の大きなはがれ,”flaking”はりん片状の小さなはがれ,”scaling”はスケール状の大きなはがれをいうこともある。なお,”scaling”ははがれの他にさび落としの意味にも用いられる。
K5500
ぜい化(脆化) brittleness, embrittlement brittleness:時間の経過に伴って,塗膜が柔軟性を失って小さな細片に容易に分解するようになる現象。
embrittlement:膜がたわみ性を損なう現象。
K5500
膨れ blister 塗膜に泡が生成する現象。
水分・揮発成分・溶剤を含む面に塗料を塗ったとき,又は塗膜形成後に,下層面にガス,蒸気,水分などが発生,侵入したときなどに起こる。発生した膨れは,その大きさと密度を調べる。JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第2節:膨れの等級」
K5500
ふくれ blister 金属中又は皮膜下にガス,液体又は腐食生成物が蓄積して,局部的にふくれる現象。 Z0103
用語 対応英訳 定義・解説 出典
白亜化 chalking 膜の成分の一つ又はそれ以上が劣化して膜の表面に微粉がゆるく付着したような外観になる現象。
白亜化の程度を調べるには,指先,フェルト,ビロードなどで塗膜の表面を軽くこすって,粉末状のものが塗面から離れて指先などに付着する程度を見るか,湿らせて表面を粘着性にした写真印画紙をいていの荷重で塗面に圧着したときの,塗面から離れて粘着した粉状物質による印画紙の面の汚れの濃さを比較して見る(従来法)か,又は指定の粘着テープを塗面において,指で強くこすり,付着した粉末状物質の量を標準写真と比較して調べる。JIS K 5600-8-6参照。
K5500
白亜化(はくあか) chalking 塗膜の劣化の一種。塗膜表面が粉末状になる現象。 Z0103
チョーキング chalking, powdering 表面が粉末状になる現象。主として光による劣化が原因である。自亜化ともいう。 H0201
侵食,エロージョン erosion 天然暴露中に白亜化によって,又は風に運ばれた砂の研磨作用によって塗膜の表面が摩滅する現象。その結果,下地が現れる現象もある。
参考:JIS K 5600-8-6「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第6節:白亜化の等級」塗膜の白亜化の程度の図版による規定が示されており,この方法によって白亜化の程度を等級付ける方法を規定しています。この方法を用いるとき,特に白亜化の程度がわずかであるときは,真の劣化による生成物か,付着したごみなのかを注意して区別しなければなりません。
K5500
ブルーミング blooming 初期につやあり塗装であった表面上に粉末状物質を生じる現象。そのため,つや及び色の冴えが失われる。 K5500
変色 discoloration, discoloring 塗膜の色の色相・彩度・明度のどれか一つ又は一つ以上が変化する現象。主として彩度が小さくなり,又は更に明度が大きくなる現象を退色という。 K5500
黄変(塗膜の) after yellowing 塗膜の色が黄味を帯びる現象。日光の直射,高温又は暗所,高湿の環境などにあるときに現れやすい。 K5500
移行 migration 塗膜に含まれる顔料が表面に移り出てくる現象。表面を布などでこすると,顔料が布などに付着するので分かる。又は,下層の可塑剤が表面に移り出てくる現象。 K5500
退色 fading 塗膜の色あせ。主として彩度が小さくなり,又は更に明度が大きくなる現象。 K5500
色あせ colour fade-out, fading 着色した陽極酸化皮膜の色が光,熱,薬品などによって失われる現象。 H0201
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