塗膜老化予測のための各種試験(長期耐久試験)

 JIS Z 0103「防せい防食用語」,JIS K 5500「塗料用語」,JIS G 0202「鉄鋼用語(試験)」,JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」,JIS H 8200「溶射用語」の用語定義の中から,塗装後の経年での塗膜老化を予測するために実施される各種長期耐久試験に関連した用語を抜粋したもの,及び塗料用語辞典(色材協会),塗料原料便覧(日本塗料工業会)などを参照したSEKIGIN独自の解説を紹介します。
 用語は【屋外等実環境での試験】,【人工的に作られた環境での試験】に分けて紹介します。
 なお,解説中の“参考追記:”は,JIS用語規定を分かりやすくするため,SEKIGIN担当者が追記した内容です。
用語 対応英訳 定義・解説 出典
耐久性 durability 物体の保護,美粧など,塗料の使用目的を達成するための,塗膜の性質の持続性。 K5500
耐候性 weather resistance 屋外で,日光,雨風,露霜,寒暖,乾潤などの自然の作用に抵抗して変化しにくい塗膜の性質。
塗膜の耐候性を評価する試験方法には,JIS K 5600-7-6「塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性-第6節:屋外暴露耐候性」がある。
K5500
耐候試験 weathering test 塗膜の耐候性を調べる試験(JIS K 5600-7-6参照)。 K5500
耐候試験台 exposure rack 塗膜の耐候性を試験するために,塗装試験片を取り付けてさらす台。
塗膜が太陽光にできるだけ直面することが望ましい。自動的に直面するようにしたものもある。固定式のものは,台が正南向きで,塗面が上向きに傾いている。JIS K 5600-7-6では,水平面との傾きが45度と定めている。
K5500
屋外暴露試験 outdoor exposure test 試験片を,一定期間屋外にさらして,自然環境での腐食,さび,劣化などの状態を調べる試験。大気暴露試験,耐候性試験ともいう。 Z0103
屋外暴露試験 outdoor-exposure test 試料を屋外の自然環境に暴露して,化学的・物理的性質の経時変化を調べる試験。 H0201
大気暴露試験 atmospheric corrosion test 屋外又は屋内の大気中に試験片を暴露し,日光,風雨,大気汚染などによる腐食状況を調べる試験 G0202
暴露試験 weathering test 溶射を施した試料を屋外に暴露して,自然環境における皮膜のさび,膨れ,はく離などの状態を調べる試験。
屋外暴露試験又は耐候試験ともいう(JIS K 5600-1-7参照)。
H8200
屋外暴露試験 outdoor exposure test JIS Z 0103「防せい防食用語」では,試験片を一定期間外にさらして,自然環境での腐食,さび,劣化などの状態を調べる試験。
大気暴露試験,耐候性試験などともいう。
関連規格に,JIS K 5600-7-6「塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性-第6節:屋外暴露耐候性」,JIS Z 2381「大気暴露試験方法通則」がある。
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用語 対応英訳 定義・解説 出典
促進耐候試験 accelerated weathering test 人工光源から発する光と断続的な人工降雨を与える装置を用い,試験片の腐食,さび,劣化などの状態を調べる試験。 Z0103
促進耐候試験 accelerated weathering test, accelerated weathering, artificial weathering 塗膜は屋外にさらされると,日光,雨風などの作用を受けて劣化する。この種の劣化の傾向の一部を短時間に試験するために,紫外線又は太陽光に近似の光線などを照射し,水を吹き付けるなどして行う人工的な試験。
参考追記:光源の異なるJIS K 5600-7-7「塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性-第7節:促進耐候性(キセノンランプ法)」,JIS K 5600-7-8「塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性-第8節:促進耐候性(紫外線蛍光ランプ法)」が規定されている。しかし,規格の条件は光照射120分間中に純水18分間吹き付けなど,金属の腐食に影響の大きいイオン等を考慮しておらず,もっぱら塗膜など有機物質の紫外線劣化を促進する条件となっている
。このため,JIS Z 0103「防せい防食用語」での定義に忠実な試験を実施するためには,促進耐候試験と複合サイクル試験などの耐食性を評価する試験との組合せなどが必要になる。
K5500
促進耐候試験機 acclerated weathering machine 促進耐候性を試験する機械。
紫外線光源の種別で試験機の規定として,JIS B 7751「紫外線カーボンアーク灯式の耐光性試験機及び促進耐候性試験機」,JIS B 7753「サンシャインカーボンアーク灯式の耐光性試験機及び促進耐候性試験機」,JIS B 7754「キセノンアークランプ式耐光性及び促進耐候性試験機」がある。塗料やプラスチック用に,JIS K 5600-7-8「塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性-第8節:促進耐候性(紫外線蛍光ランプ法)」に規定される蛍光ランプ式の試験機もある。
K5500
促進耐候性試験 accelerated weathering test 紫外線,可視光線の照射や断続的降雨など,人工的に加速された自然条件を作り出した試験装置内へ試験片を置き,さびの発生状態などを調べる試験。主としてめっきや塗覆装の耐候性加速試験として用いられる。 G0202
促進耐候性試験 accelerated weathering test 人工光源から発する光と断続的な人工降雨,結露などを与える装置を用い,試料の物理的及び化学的変化を調べる試験。 H0201
塩水噴霧試験 salt spray test 試験槽内に試験片を置いて,塩化ナトリウム水溶液を霧状にして吹き込み,金属材料の耐食性,被覆材料などの防食性を調べる試験。 Z0103
塩水噴霧試験 salt spray test, salt spray testing 食塩水溶液を噴霧状にして吹きこんだ器中に試験片を入れて金属材料,被覆金属材料,塗装金属材料などの防食性を評価する試験(JIS K 5600-7-1参照)。 K5500
塩水噴霧試験 salt spray test 5%塩化ナトリウム水溶液を35℃に保って噴霧させた試験装置内へ試験片を静置して,さび,膨れなどの発生状態を調べる試験。
めっき,塗覆装などの表面処理を施したもの,ステンレス鋼などに用いられる。
G0202
塩水噴霧試験 salt spray test 溶射された試料を食塩水の噴霧中に暴露して,さび,膨れ,はく離などの状態を調べる試験(JIS Z 2371参照) H8200
塩水噴霧試験 salt spray test 塩水を噴霧した雰囲気中において皮膜の耐食性を調べる試験。 H0201
複合サイクル試験 combined cyclic corrosion test 腐食環境条件の組み合わせを変化させたものを1サイクルとしてこれを繰り返し行い,試験片の腐食や被覆の劣化などの状態を調べる試験。 Z0103
複合サイクル試験 combined cyclic corrosion test JIS K 5600-7-9「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第9節:サイクル腐食試験方法‐塩水噴霧/乾燥/湿潤」に塗膜の複合サイクル試験方法が規格されている。 編集
湿潤試験 humidity cabinet test 高湿度に調整した恒温装置内に試験片を入れて,湿潤状態に保ち,腐食,さび,劣化などの状態を調べる試験。 Z0103
湿潤試験 humidity cabinet test 湿り水蒸気の雰囲気中で塗膜などの変化を調べる試験。 H0201
浸せき試験 immersion test 試験片を塩化ナトリウムなどの所定の溶液中に浸せきし,金属の腐食や被覆物の劣化などの状態を調べる試験。 Z0103
浸漬試験 immersion test 溶射された試料を試験液中に浸して皮膜のさび,膨れ,はく離などの状態を調べる試験(JIS H8664参照)。 H8200
乾湿交互浸漬試験 alternating immersion test 試験溶液への浸漬と,引き上げ後乾燥する操作を,定期的に交互に行う腐食試験。 G0202
交互浸せき腐食試験 alternating immersion corrosion test 試験片を腐食溶液に浸せき,乾燥を交互に繰り返して腐食などの状態を調べる試験。 H0201
耐食塩水性試験 salt water immersion test 溶射された試料を食塩水中に浸して皮膜のさび,膨れ,はく離等の状態を調べる試験。 H8200
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