一般に用いられる塗料名称

 JIS Z 0103「防せい防食用語」,JIS K 5500「塗料用語」の用語定義の中から,塗料名称に関する用語を抜粋したものを紹介します。なお,解説中の“参考追記:”は,JIS用語規定を分かりやすくするため,SEKIGIN担当者が追記した内容です。
 用語は【プライマー】,【さび止め塗料】,【展色材(樹脂)別塗料】,【特殊用途の塗料】に分けて紹介します。
用語 対応英訳 定義・解説 出典
エッチングプライマー etching primer 成分の一部が素地の金属と反応して化学的生成物を作り,素地に対する塗膜の付着性を増すことを目的としたプライマー。 Z0103
エッチングプライマー etching primer, pretreatment primer, wash praimer, etch primer 金属塗装の際の素地処理に用いるプライマーの一つ。
成分の一部が生地の金属に反応して化学的生成物を作り,生地に対する塗膜の付着性を増すようにした,金属素地処理用の塗料。主に,りん酸・クロム酸を含む。通常は,全成分を二つに分けて作って一組として供給し,使用の直前に混合する。JIS K 5633参照。
K5500
ショッププライマー shop primer 鋼材をブラスト処理し,本塗装に先立って,ブラスト直後に塗装する塗料。
参考追記:一般的な鋼橋の製作では,鋼板のブラスト処理(原板ブラストという)とショッププライマー塗装は,鋼材メーカーで実施される。ショッププライマーを塗装した鋼板はショップ鋼板と呼ばれる。この塗装の目的は,その後に実施される橋梁製作メーカーでの塗装系の本塗装までの間の一次防せいである。なお,橋梁製作メーカーで実施する本塗装に先立って行われる橋梁ブロックのブラスト処理は,製品ブラストといわれる。
Z0103
ジンクリッチプライマー zinc-rich primer 電気化学的防食作用を与えるのに十分な量の亜鉛粉末を配合した鉄鋼用のさび止め塗料。
それによって,乾燥塗膜は導電性となり,金属亜鉛が素地より先に腐食して鉄部を保護する。塗膜形成要素として,アルキルシリケート系ビヒクルを用いた無機系ジンクリッチプライマーとエポキシ樹脂系ビヒクルを用いた有機系ジンクリッチプライマーとがある。JIS K 5552参照。
K5500
用語 対応英訳 定義・解説 出典
一般用さび止めペイント anticorrosive paint for general use 鉄鋼のさび止め地肌塗り用のペイント。
使用するさび止め顔料が限定されていないもの。JIS K 5621参照。
K5500
亜酸化鉛さび止めペイント lead auboxide anticorrosive paint さび止め顔料として亜酸化鉛を用いて作った,鉄鋼のさび止め地肌塗り用の塗料。JIS K 5623参照。 K5500
塩基性クロム酸鉛さび止めペイント badic lead chromate anticorrosive paint さび止め顔料として塩基性クロム酸鉛を用いて作った,鉄鋼のさび止め地肌塗り用の塗料。旧JIS K 5624参照。 K5500
鉛丹さび止めペイント red lead anticorrosive paint さび止め顔料として鉛丹を用いて作った,鉄鋼のさび止め地肌塗り用の塗料。旧JIS K 5622参照。 K5500
鉛丹ジンククロメートさび止めペイント red lead-zinc chromate anticorrosive paint さび止め顔料として,鉛丹とジンククロメートとを用いて作った,鉄鋼のさび止め地肌塗り用の塗料。旧JIS K 5628参照。 K5500
シアナミド鉛さび止めペイント lead cyanamide anticorosive paint さび止め顔料として,シアナミド鉛を用いて作った,鉄鋼のさび止め地肌塗り用の塗料。JIS K 5625参照。 K5500
ジンククロメートさび止めペイント zinc chromate anticorrosive paint, zinc chromate primer さび止め顔料としてジンククロメートを用いて作った,鉄鋼のさび止め地肌塗り用の塗料。旧JIS K 5627参照。 K5500
ジンクリッチペイント zinc rich paint 乾燥塗膜の大部分が金属亜鉛末から成り,わずかの無機質と有機質のバインダーで結合された塗料で鋼材のさび止めに用いる塗料。 Z0103
ジンクリッチペイント zinc-rich paint 展色材をできるだけ少なくし,合成樹脂ワニス又はアルキルシリケート,アルカリシリケートなどシリケート系ビヒクルに亜鉛末をできるだけ多く配合して作ったさび止めペイント。
塗膜が水分に触れると,鉄よりもイオン化傾向の大きい亜鉛が陽極となって,亜鉛から鉄に向って防食電流が流れ,鉄は腐食から守られる。塗膜中に亜鉛末が85~95%含まれているとき,防食効果が大きい。各種鋼構造物の防食塗装に用いられる。被塗鉄面は,サンドブラストなどで十分にさびを除き,適度の粗さにしてから塗らないと効果が薄い。JIS K 5553参照。
K5500

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アクリル樹脂塗料 acrylic resin coating, acrylic corting アクリル酸またはメタクリル酸の誘導体を重合して得た樹脂を塗膜形成要素として用いて作った塗料。JIS K 5653,JIS K 5654参照。 K5500
アミノアルキド樹脂塗料 amino alkyd resin coating 塗膜形成要素として,アミノ樹脂トアルキド樹脂とを用いて作った塗料。
多くは加熱によって両樹脂の共縮合反応が起こって塗膜ができる。アミノ樹脂として尿素,メラミンなどアルデヒドとの縮合物又はそのアルキルエーテル化合物が用いられる。JIS K 5651参照
K5500
アルキド樹脂塗料 alkyd resin coating, alkyd coating 塗膜形成要素として,アルキド樹脂を用いて作った塗料。
アルキド樹脂塗料に含まれる脂肪酸には酸化形と非酸化形とがある。樹脂は脂肪酸含有量の多少によって,長油・中油・短油に分ける。
酸化形長油アルキド樹脂を用いて作った合成樹脂調合ペイントは建築,船舶,鋼橋などの塗料の上塗りに,酸化形短油アルキド樹脂又は酸化形中油アルキド樹脂を用いて作った塗料は鉄道車両,機械などの塗装の上塗りに用いる。JIS K 5516,JIS K 5572など参照。
K5500
アルミニウムペイント alumin(i)um paint アルミニウム粉を顔料分とするエナメルペイント。
アルミニウム粉又はアルミニウム粉のペーストと油ワニスとを,あらかじめ混合したものと,別々の容器に分けて1組としたものがある。さび止めペイントの上塗り,熱線反射塗料,銀色塗料などに用いる。JIS K 5492参照。
K5500
塩化ビニル樹脂塗料 vinyl chroride resin coating ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂状物質を塗膜形成要素として,用いて作った塗料。耐薬品性が優れている。塩化ビニル樹脂ワニス・塩化ビニル樹脂エナメル・塩化ビニル樹脂プライマーがある。JIS K 5581,JIS K 5582,JIS K 5583参照。 K5500
カシュー樹脂塗料 cashew nut resin coating カシューナットセル油又はこれと類似の天然フェノール含有物質にフェノール類を加え,この混合物とホルムアルデヒドとの共縮合物を樹脂分とし,乾性油などを加え,それらの混合物を塗膜形成要素とする塗料。JIS K 5641,JIS K 5646参照。 K5500
シリコーン樹脂塗料 silicone resin coating 塗膜形成要素としてシリコーン樹脂を用いて作った塗料。 K5500
フェノール樹脂塗料 phrnolic coating, phenolic resin coating フェノール類とアルデヒド類とを縮合させて得た合成樹脂塗料を塗膜形成要素とする塗料。
ロジン変性フェノール樹脂又はアルキルフェノール樹脂と乾性油とを塗膜形成要素として作った油性塗料,アルコール可溶性フェノール樹脂をアルコールに溶かして作ったアルコール性塗料などがある。
塗膜は,一般に耐酸性,耐アルカリ性,耐油性,耐水性,電気絶縁性などが優れている。旧JIS K 5554参照。
K5500
フタル酸樹脂塗料 phthalic resin coating, alkyd resin coating 無水フタル酸を原料とするアルキド樹脂を塗膜形成要素とする塗料。
耐候性が優れている。フタル酸樹脂エナメル。旧JIS K 5562,JIS K 5572参照
K5500
不飽和ポリエステル樹脂塗料 unsaturated polyester coating 塗膜形成要素として不飽和ポリエステルとビニル単量体とを用いて作った塗料。
不飽和ポリエステルとして,例えば無水マレイン酸と2価アルコールとの縮合物を用いる。この縮合物は可溶可融性で,スチレンのようなビニル単量体に溶けて液状になるが,加熱するか過酸化物の作用下で不飽和基とビニル基とが付加重合をおこして不溶不融の塗膜を作る。
この塗料の乾燥には溶剤の蒸発及び酸素の供給は必要がなく,副生物の放出がなくて硬化するので,厚く塗りつけても,短時間であっても,塗膜ができる。他の塗料と比べて,特に厚塗り用のワニスかパテが優れている。
K5500
メラミン樹脂塗料 melamine resin coating, melamine coating メラミンとホルムアルデヒドとの縮合物又はそのアルキルエーテル化物を塗膜形成要素とする塗料。 K5500

用語 対応英訳 定義・解説 出典
電気絶縁塗料 electrical insulating varnish, insulating varnish, insulating coating, electrical insulating coating 電気絶縁性の大きい塗膜を作る塗料。
コイルワニス,コア-ワニス,エナメル銅線用ワニス,接着用ワニス,絶縁布用ワニスなどがある。JIS C 2351,JIS C 2353参照。
K5500
路面標示用塗料 traffic marking paint, traffic paint 道路標識線などを描くのに用いる路面用の塗料。
常温施工用と融解塗装用とがある。JIS K 5665参照。
K5500
防火塗料 fire-retardant paint, fire-retardant coating 難燃性の塗膜形成要素を用いるか,加熱したとき塗膜が泡立ち,膨れ上がって断熱層になるように作った塗料。 K5500
カビ防止塗料 fungus resistant coating, fungicidal paint 素地又は塗料に,かびが発生するのを防ぐために用いる塗料。かび防止剤を加えて作る。 K5500
外舷用塗料 top side paint 船舶外板の水線部より上の部分に塗る塗料。塗膜は耐水性と耐候性に優れている。 K5500
水線部塗料 boot topping 船舶の水線部に用いる塗料。
塗膜形成要素の種類によって油性系,ビニル樹脂系,塩素化樹脂系などがあり,用途によって防汚用と耐候用とがある。
K5500
船底塗料 ship bottom paint 船底の腐食防止,生物付着防止,生物侵入防止などに用いる塗料。
鋼船船底塗料と木船船底塗料とがある。鋼船船底塗料は,塗膜形成要素の種類によって油性塗料,ビニル樹脂塗料,塩素化樹脂系塗料などに分かれ,目的によってA/C(anti-corrosibe paint),A/F(anti-couling paint),B/T(boot topping paint)の3種類がある。A/Cはさび止め用で,下塗りと中塗りとに用い,A/Fは生物付着防止のための防汚用として上塗りに用い,B/Tは水線部の防汚用又は耐候性の上塗りに用いる。一般に,さび止め用は,さび止め顔料を加えて作り,防汚用は防汚顔料又は防汚性物質を加えて作る。なお,塗膜形成要素自体が防汚性能をもち,海水中で徐々に溶出するタイプのA/Fもある。
K5500
ホールドペイント hold paint 船倉の内部を塗る塗料。 K5500
シーラー sealer, sealing coat, size 素地の多孔性による塗料の過度の吸収や素地からの浸出物による塗膜の劣化などの悪影響が,上層の塗膜に及ぶのを防ぐために用いる素地塗り用の塗料。 K5500
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