塗装(下地処理)

 戻る:“塗料・塗装JIS用語一覧”

 “お役立ち情報”では,“金属・腐食・防食業界”へのリンク,“腐食・”及び “防食”に関連する書籍,その他の書籍や用品情報をまとめて紹介

 JIS Z 0103「防せい防食用語」,JIS K 5500「塗料用語」の用語定義の中から,塗装時に実施されるブラスト,脱脂などの下地処理(素地調整)に関わる用語を抜粋しもの,及び塗料用語辞典(色材協会),塗料原料便覧(日本塗料工業会)などを参照したSEKIGIN独自の解説を紹介します。なお,解説中の“参考追記:”は,JIS用語規定を分かりやすくするため,SEKIGIN担当者が追記した内容です。

 目次に戻る

用語 対応英訳 定義・解説 出典
生地 original surface, surface to be coated, substrate, ground, original substrate 木材,コンクリート,鋼材などの塗装にかかる前の物体。主に表面についていう。下地,素地の項参照。 K5500
生地ごしらえ surface preparation 油取り,さび落とし,穴埋めなど,下塗り塗料を塗るための準備作業として,生地に対して行う作業。下地調整,素地調整の項参照 K5500
下地 substrate 塗料を塗るときの面。生地,素地の項参照。 K5500
下地調整(下地ごしらえ) substrate preparation, surface preparation ある層を塗るときの,塗り前の処理。下地パテのへら付け,研磨などの下地の吸収性を調節したり,でこぼこを修正するなどの工程。生地こしらえ,素地調整の項参照
参考追記:一般には,次の解説が多く,コンクリート面やモルタル面の塗装前処理を示す用語として使われている。
1) 塗装下地の欠損,ひび割れを下地調整材で補修し,仕上げ面にふさわしく整えること。脆弱層はシーラーや強化プライマー処理で強化する。下処理,素地調整ともいう。
2) 下地の乾燥作業,汚れや付着物の除去作業,穴埋め,吸い込み止めやアルカリ止めなどのためにシーラーを塗る作業など,施工に適するよう下地をあらかじめ整えること。
K5500
素地 substrate 塗料が塗装される表面。素地には,未塗装表面及び既塗装表面の両者を含む。
生地,下地の項参照。
K5500
素地調整 surface preparation JIS Z 0103「防せい防食用語」では,塗料の付着性及び防せい効果をよくするために,機械的又は化学的に被塗装物体表面を処理し,塗装に適するような状態にすること。ケレンともいう。
塗装のみならず,めっき,溶射のための下地の調整にも用いる。さらに,防せい防食以外では,塗装に備えて表面を処理するすべての方法。生地ごしらえ,下地ごしらえ,と定義され,木部面では,汚れ,異物の除去,打こんの補修,けば取り,かんな目,逆目の除去,やにの処理,裂け目,虫穴の充てんなど。金属面では,加工時にできたうねり,ひずみ,溶接跡の処理,付着した油脂類,研削材,金属くず,さびなどの除去。壁塗りでは,付着した塗材の除去,き裂埋め,しみ抜き,割れ目,くぼみ目などの補修,あく止め,吸い込み止めなどの作業を意味している。
JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」,JIS Z 0313「素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法」では,素地調整は,鋼材の防せい防食を目的とする塗膜など被覆が良好に付着するよう,鋼材表面のミルスケール,さびなど被覆の付着に支障となる物質を除去し,また,表面に適切な粗さを与える機械的又は化学的処理と用語を定義し,ブラスト処理方法,使用する研削材,並びに処理面の試験及び評価方法関する基本的事項について規定している。
参考:(社)色材協会編「塗料用語辞典」技報堂出版,1993では,塗料を塗り,よい仕上げをするのに適するように,素地の汚れを取り去り,平滑にする作業をいう。木製品では汚れや遺物の除去,打痕の補修,けば取り,鉋(かんな)目や逆目の除去,やにの処理,裂目や虫孔の充填等,金属面では加工時にできたうねりやひずみ,溶接後の処理,付着した油脂類や研磨材,金属屑,さび等の除去,壁塗りでは付着した塗材の除去や亀裂埋め,シミ抜き,割れ目,くぼみ等の補修,あく止めや吸込み止め等が素地調整の作業である。
鋼橋製作時の素地調整:塗装塗膜の仕上りや塗膜耐久性を左右する重要な作業である。鋼構造物塗装設計施工指針(鉄道総合技術研究所編集)では,鋼橋製作時の素地調整として一次素地調整と二次素地調整が規定されている。一次素地調整は構造物に使用する鋼板についての規定で,表面粗さRzJIS(10点平均粗さ)80μm以下となるように原板ブラストを行い,適用する塗装系に従い,エッチングプライマ塗装もしくは無機ジンクリッチプライマ塗装を行う。二次素地調整は,鋼橋のブロック組立て後,さび発生箇所,溶接,溶断,加熱矯正による荒損箇所などに対処するために製品ブラストを実施し,表面粗さRzJIS(10点平均粗さ)50μm以下となるように仕上げる。また,ブラスト処理は塗装直前(3時間以内)に実施しなければならないこと,相対湿度80%以上では作業を禁止することなどが規定されている。
編集
ケレン cleaning, hand cleaning JIS Z 0103「防せい防食用語」では,素地調整と同義語。
「第2版 鉄道用語辞典」丸善,2006では,塗装前に被塗面上のさび,油脂,汚れその他塗料の付着性や防せいに有害な物質を除去することで,素地調整ともいう。その方法にはショットブラスト,サンドブラスト,ケレンハンマなどの機械的処理や,塩酸,硫酸,リン酸などで酸洗いする化学的処理などがある。
(社)色材協会編「塗料用語辞典」技報堂出版,1993では,cleanの転訛(てんか)した陶工用語,鋼橋塗装,建築塗装等で鉄部のさびた部分をスクレーパ-等で除去すること。
編集
表面粗さ surface roughness 金属表面などの表面性状を表すパラメータ。
JIS B 0601「製品の幾何特性仕様 (GPS) -表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ」に規定されている。
素地調整では,十点平均粗さ(ten point height of irregularities)で規定されることが多い。一方,JI B 0601は過去の改訂で,パラメータの定義が変更され,それに伴い記号も変更されているので注意が必要である。
以下に示すように,2001年のJIS改訂でそれまで十点平均粗さを示す記号Rzは最大高さの記号になり,十点平均粗さの概念が削除された。このため,それまでの十点平均粗さ意味する記号として,RzJISの表記が用いられている。
2001年以前の文献と現在の文献を引用する場合は記号の意味が異なるので注意が必要である。2001年の記号と1994年の記号からの変更は次の通りである。
Ra(算術平均粗さ)⇒Ra(算術平均粗さ)
Ry(最大高さ)⇒Rz(最大高さ)
Rz(十点平均粗さ)⇒(削除)
Sm(凹凸の平均間隔)⇒Rsm(輪郭曲線要素の平均長さ)
S(局部山頂の平均間隔)⇒(削除)
tp(負荷長さ率)⇒Rmr(負荷長さ)
編集
除せい度(清浄度) preparation grade ある(素地調整)方法によって得られる清浄仕上げの品質水準を説明する分類。
JIS Z 0313-1998「素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法」では,除せい度とそれに対する鋼材表面の状態を次のように定義している。
Sa1  拡大鏡なしで,表面には,弱く付着したミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。
Sa2  拡大鏡なしで,表面には,ほとんどのミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。残存する汚れのすべては,固着している。
Sa2 1/2  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がない。残存するすべての汚れは,そのこん跡が斑点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である。
Sa3  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がなく,均一な金属色を呈している。ブラストに先立って,厚いさび層,油,グリースや泥土は除去する。
この規格は,ISO8501-1に整合しており,判定は次のISO規格の写真集と比較して行うことになっている。
ISO8501-1:Preparation of steel substrates before application of paints and related products -Visual assessment of surface cleanliness - Part 1 ; Rust grades and preparation grades of uncoated steel substrates and of steel substrates after overall removal of previous coatings。
一方,比較的使用例の多い米国の規格,SSPC (Steel Structures Painting Council): 「米国鋼構造物塗装協会で規格するブラスト仕上げ等級」では,除せい度の等級は,次のように規定している。
White Metal Blast Cleaning(完全ブラスト処理:SP5)  全ての錆・ミルスケール・ 塗料その他異物を除去する。  ISO規格のSa3相当
Near-White Blast Cleaning(準完全ブラスト処理:SP10)  全ての異物を完全に除去。極めて軽微なくもり・条痕,錆の染み・ミルスケール・酸化物等の軽微な残滓は容認。1平方インチ当たり95%以上は残滓がないこと。ISO規格のSa2 1/2相当
Commercial Blast Cleaning(経済的ブラスト処理:SP6)  少なくとも1平方インチ当たり2/3は錆・ミルスケールの残滓がないこと。ISO規格のSa2相当
Brush-off Blast Cleaning(スイープブラスト処理:SP7)  固く付着したミルスケール,錆及び塗膜の残滓を除き全ての異物を除去する。ISO規格のSa1相当。
編集
さび度 rust grade 清掃作業前の鋼材表面に形成されているさびの程度を説明する分類。
さびの程度は,5段階に分けた写真によって評価される。規格には,JIS K 5600-8-3「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第3節:さびの等級」,JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」などがある。
K5500
黒皮 mill scale ミルスケールの項参照 編集
ミルスケール mill scale 鉄鋼の熱間圧延中に生じる酸化鉄の層。黒皮という。 K5500
ミルスケール mill scale 鉄鋼の製造過程において高温に加熱されるとき,空気中の酸素と反応して生成し付着している酸化物被膜。黒皮ともいわれる。 Z0103
ブラスト処理 abrasive blast-cleaning JIS Z 0103「防せい防食用語」では,金属製品に防せい防食を目的として塗料などを被覆する場合に,素地調整のために行われる。研削材に大きな運動エネルギーを与えて金属表面に衝突させ,金属表面を細かく切削及び打撃することによってさび,スケールなどの付着物を除去して金属表面を清浄化又は粗面化させる方法。 編集
ショットブラスト shot blasting 鋼粒ショットを研削材として用いるブラスト処理。 編集
グリットブラスト grit blasting 鉄,鋼スラグ又はアルミナ(コランダム)を研削材として用いるブラスト処理。 編集
サンドブラスト sand blasting, sand blast 砂を研削材として用いるブラスト処理。
安価であるが,研削材の衝突で研削材が粉砕した量の粉塵を発生するため,採用を控える傾向にある。
編集
ブラスト処理用研削材 blast cleaning abrasive ブラスト処理に用いることを目的とする固形材料。
研削材は,JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」,JIS Z 0311「ブラスト処理用金属系研削材」,JIS Z 0312「ブラスト処理用非金属系研削材」に規定されている。
編集
研磨, サンディング sanding, rubbing 素地をならすために用いられる研削方法。また,次の塗料を塗る前に,塗面を平らにならすために用いる研磨方法。 K5500
研磨紙 abrasive paper, sandpaper 塗膜などを研ぐための研磨材料。研磨粒子を紙に付着させたもの。
から研ぎ用の研磨紙と,水研ぎ用の耐水研磨紙とがある。JIS R 6252「研磨紙」,JIS R 6253「耐水研磨紙」
K5500
チッピング chipping 手工具及び電動工具を用いて,旧塗膜又はさび及びミルスケール(黒皮)をりん片状に除去する操作。 K5500
デスケーリング de-scaling, scaling 鋼材又はその他の鉄素地からミルスケール(黒皮)又は層状さびを除去する操作。 K5500
火炎清浄,フレームクリーニング flame cleaning 金属製品の表面に高温の火炎を吹き付け,ミルスケール,さびなどを浮き上がらせた後,ワイヤーブラシでこすって表面を清浄にすること。 K5500
化学的前処理 chemical pretreatment 塗料の塗装前に施されるすべての化学的方法をいう一般用語でもある。
参考追記:りん酸塩処理・黒染め処理・クロメート処理などがある。
K5500
酸洗い acid pickling 金属製品のミルスケール又は厚いさび層を除去するため,比較的長い時間,酸水溶液中に浸して清浄にすること。 K5500
脱脂 degreasing 一般には,溶剤又は水性洗剤を用いて,塗装前に油,グリース及び類似の物質を表面から除去する操作。
参考追記:工業的には蒸気清浄,超音波洗浄,アルカリ脱脂なども行われる。
K5500
フラッシュさび flash rust, flash rusting ブラスト処理後の鉄素地面に短時間に形成される非常に薄いさび,又は水性塗料を鉄面に直接塗装した後に急速に形成されるさび。 K5500
一時防せい temporary rust prevention 作業行程,保管,輸送中などにおける短期間の防せい。 Z0103
エッチング etching 塗装分野では,塗膜の付着性確保のため,金属表面を化学薬品によって荒らす方法。
備考:1.酸性溶液によって,金属表面のさび,及び/又はミルスケールを除去する処理に対する用語として一般的であるが,同様な木材の着色のための特殊な処理(staining)もエッチングという。
2.広義には,表面から何らかの浸食作用によって物質を除去することの総称で,適用する技術により,化学研磨,電解研磨(※1),イオンエッチング,熱エッチングなどⅡ分類される。
(※1)化学研磨,電解研磨は,光輝仕上げ(高純度アルミニウム,光輝アルミニウム合金など,金属表面を光輝面に仕上る処理)にも用いられる。
K5500
クロメート処理(クロム酸塩処理) chromating, chromate treatment クロム酸及び/またはクロム酸塩からなる溶液を用いて行うある種の金属表面の化学的前処理の総称として用いられる。次に,亜鉛面やアルミニウム面で実施される例を示す。
a)亜鉛めっき(亜鉛メッキ)(※1)後のクロム酸系処理:亜鉛の腐食による白色のさび発生を防止し,美観維持のために実施される。クロメート処理によって表面にクロム酸亜鉛の緻密な被膜ができ,亜鉛の腐食が抑制される。重クロム酸塩では黄金色に,無水クロム酸系では虹淡色の光沢のある仕上がりとなる。
b)クロム酸塩によるアルミニウムの化成処理:クロム酸塩のほか,ふっ化物などを加えた液に浸液し,黄金色の緻密な皮膜を作る。りん酸系処理に比べて防せい力が大きい。アルミニウムのクロメート処理には,これ以外にクロム酸-りん酸系処理がある。
(※1)亜鉛めっきには,亜鉛イオンや亜鉛錯イオンを含む電解質に直流又はパルス電流を流して,陰極上に金属亜鉛を析出させる電気亜鉛めっき,溶融した亜鉛浴に浸漬し,温度差を利用して鉄鋼表面に亜鉛を析出させる溶融亜鉛めっきがある。
K5500
りん酸塩処理(りん酸塩化成処理) phosphating りん酸及び可溶性りん酸塩を主体とする水溶液で金属を処理し,その表面に不溶性のりん酸塩皮膜を作る表面処理方法。
金属の防せい処理,塗装下地用処理などとして用いられる。形成される被膜成分に応じて,りん酸亜鉛被膜,りん酸鉄被膜,りん酸マンガン被膜処理などがある。処理液中には遊離のりん酸と被膜形成金属の第一りん酸塩があり,金属をこの液中に浸すと液中のりん酸によって金属は溶解し,同時に第一りん酸塩の加水分解が起こり,難溶性の第二及び第三りん酸塩化物が金属表面に沈着し金属面を覆う被膜となる。被膜は使用目的,作業性,コストなどによって最適なものが選定される。
K5500
黒染め処理   黒染め処理とは,金属表面を黒色の薄い皮膜で覆う化成処理。鉄の場合,表面に1μm程度の四三酸化鉄(マグネタイト)皮膜を形成させる方法や,リン酸塩を用いてリン酸鉄皮膜を形成される方法などがある。黒染め処理は,寸法精度が求められるような鉄鋼部材の防せい性向上,光沢のある黒色仕上げによる美観向上を目的に実施されている。防せい性は,クロメート処理,リン酸塩処理より劣る。 編集
タックラグ, 粘着布 tack rag 研磨作業後,次の塗装前に素地からダストを除去するために用いられる粘着物質を含浸させた織物。 K5500
フェザーエッジング feather edging 通常,次の塗料を塗り重ねる前に,塗膜の縁を研磨して,その厚さを次第に薄くする操作。
例えば,補修塗りの前に,塗膜の損傷部のエッジに行う研磨操作など。
K5500
デニビング,つぶの研磨 de-nibbing 目の細かい研磨紙で塗膜の表面に目立つ小粒子を研磨して除く操作。 K5500
研ぎおろし flatting down, felting down, flatting 塗膜又は塗膜層を研磨材で研いで所定の状態まで削り取る作業。
備考:BS(英国規格)では,フェルト又は類似の材料のパッドに極めて細かい研磨剤をつけて,水又は適切な溶剤を潤滑剤として研ぎおろすことを,フェルト研ぎ(felting down)という。
K5500
焼きむき,バーンオフ burning off 塗膜を熱によって軟化させ,まだ柔らかい間にかき取って塗膜を除去する方法。
非常に厚い塗膜や素地との密着が強く,通常の工具で容易に除去できない場合に採用されることがある。実施に際しては,熱影響を考慮しながら実施しなければならない。
K5500
 目次に戻る