塗料に用いる顔料

 JIS K 5500「塗料用語」,JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」の用語定義の中から,塗料用樹脂に関する用語を抜粋したものを紹介します。なお,解説中の“参考追記:”は,JIS用語規定を分かりやすくするため,SEKIGIN担当者が追記した内容です。
 用語は【顔料とは】,【さび止め顔料】,【体質顔料】,【着色顔料】,【その他の顔料】,【顔料の特性】に分けて紹介します。
用語 対応英訳 定義・解説 出典
顔料 pigment 一般に水は溶剤に溶けない微粉末状で,光学的,保護的又は装飾的な性能によって用いられる物質。無彩又は有彩の,無機又は有機の化合物で,黄色,補強,増量などの目的で塗料,印刷インキ,プラスチックなどに用いる。屈折率の大きいものは隠ぺい力が大きい。
備考:特殊な場合には,例えば,防せい顔料では,ある程度の水溶性が必要とされることがある。
参考追記:塗料に用いる顔料は,期待する性能で,着色顔料,さび止め顔料,体質顔料,特殊機能顔料などに分けられる。
K5500
顔料 pigment 不溶性の固体物質で,微粉末の着色体。 H0201
さび止め顔料 rust preventive pigment, rust inhibitive pigment 金属にさびが発生するのを防止する機能を持つ塗料用顔料。 Z0103
さび止め顔料 rust preventing pigment, rust inhibiting pigment, inhibitive pigment 金属にさびが発生するのを防止する機能をもつ顔料。
備考:単なる遮断機能の作用ではなく,化学的及び/又は電気化学的に金属の腐食を制御又は防止する機能をもつ顔料をいう。ほとんど又は全くさび止め効果のないべんがらに対して,鉛丹及びクロム酸亜鉛は,さび止め顔料の例である(BS)。
K5500
体質顔料 extender, filler, extender pigment 使用するビヒクルに不溶のつぶ状又は粉状で,それ自体に着色力,隠蔽(いんぺい)力はないが,他の顔料の希釈や増量など塗料・塗膜のある種の改質を目的として配合される。通常は屈折率が小さい(1.7以下)白色顔料。硫酸バリウム,炭酸カルシウム,タルク,バライト粉など。 K5500
着色顔料 color pigment (colour pigment) 塗料の色づけなどに用いる顔料。 K5500
有機顔料 organic color (organic colour), organic pigment 有機物を発色成分とする顔料。 K5500
塩基性顔料 basic pigment 金属の酸化物を主成分とする塩基性の粉末。酸価の高い油,油ワニスなどと反応して金属石けんを作る性質があり,油性塗料の塗膜を硬化させる効果が大きい。亜鉛華,鉛丹,鉛白など。 K5500
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【さび止め顔料】      
亜鉛末 zinc dust 金属亜鉛を主成分とする灰色の粉末。さび止め顔料として用いる。 K5500
亜酸化鉛 lead suboxide 金属鉛と一酸化鉛との中間の組成をもつ鉛の酸化物。灰黒色の粉末で,空気中で酸化しやすい。さび止め顔料として用いる。 K5500
鉛丹 red lead 四三酸化鉛を主成分とする朱顔料。さび止め顔料として用いる。
JIS K 5108「鉛丹(顔料)」
参考追記:鉛丹(四三酸化鉛を主成分とする赤顔料で塗料用を含む)について規定されています。【鉛丹】四三酸化鉛(PbO4)及び一酸化鉛(PbO)を主成分とし,通常の製造工程で混入する以外の不純物を含まない,赤又は黄色みの赤顔料。
K5500
塩基性クロム酸鉛 basic lead chromate クロム酸鉛と水酸化鉛とが結合したと考えられる化合物。赤黄色の粉末で,サビ止め顔料として用いる。 K5500
シアナミド鉛 lead cyanamide PbCN2を主成分とするさび止め顔料。 K5500
ジンククロメート zinc chromate, zinc yellow クロム酸亜鉛を主成分とするさび止め顔料。塩基性クロム酸亜鉛カリウム[K2CrO4・3ZnCrO4・Zn(OH) 2・2H2O]を主成分するものと,四塩基性クロム酸亜鉛[ZnCrO4・4Zn(OH) 2]を主成分としアルカリ金属を含まないものとがある。亜鉛黄ともいう。JIS K 5114 「ジンククロメート(顔料)」 K5500

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【体質顔料】      
カオリン kaoline, kaolinite 長石が風化してできた土類。含水けい酸アルミニウムを主成分とし,体質顔料として用いる。 K5500
クレー clay 水和けい酸アルミニウムを主成分とする鉱物質の粉末。体質顔料として用いる。原土の種類・分級・精製の程度によって品質が異なる。 K5500
重質炭酸カルシウム whiting, limestone powder 石灰石を微粉砕して風ひ,又は水ひ して作る。体質顔料として用いる。 K5500
タルク talc 滑石を粉砕して作った体質顔料。へん平状のものが多い。水和けい酸マグネシウムに近い組成。 K5500
沈降炭酸カルシウム precipitated calcium carbonate 石灰石を焼成して生石灰を作り,水に分散させて石灰乳とし,焼成のときに発生した二酸化炭素を反応させ,沈降させて作るか,副産物である塩化カルシウム溶液と炭酸ナトリウム溶液とを反応させ,沈降させて作った白い粉末。体質顔料として用いる。 K5500
沈降硫酸バリウム precipitated barium, sulfate, blane fixe 重晶石を還元して作った硫化バリウムの水溶液に硫酸ナトリウム溶液を加えて反応させて作った白い粉末。体質顔料として用いる。
JIS K 5115「沈降性硫酸バリウム及びバライト粉(顔料)」
K5500
白亜 whiting 寒水石の粉末。主成分は炭酸カルシウム。水ひして作ったものは,寒水クレーという。体質顔料として用いる。 K5500
バライト粉 barytes 重晶石の粉末。主成分は硫酸バリウム。体質顔料として用いる。
JIS K 5115「沈降性硫酸バリウム及びバライト粉(顔料)」
K5500

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【着色顔料】      
亜鉛華 zinc oxide 酸化亜鉛を主成分とする白顔料。
JIS K 5102「亜鉛華(顔料)」
参考追記::顔料としての亜鉛華について規定されていますが,亜鉛華は,1号,2号,3号の3種類とされています。亜鉛華の1号は,主として電気亜鉛を原料とします。2号及び3号は,主として蒸留亜鉛又は亜鉛ドロスを原料とし,2号は3号を亜硫酸ガスで漂白したものです。
K5500
塩基性炭酸鉛 basic lead carbonate, basic carbonate white lead 炭酸鉛と水酸化鉛とが結合したと考えられる化合物。白い粉末で鉛白の主成分。 K5500
鉛白 white lead 塩基性炭酸鉛を主成分とする白顔料。JIS K 5103 参照。 K5500
黄鉛 chrome yellow クロム酸鉛を主成分とする黄色顔料。5G,10Gの順に青味を帯び,R,5Rの順に赤味を増す。5G,10Gは硫酸鉛を含み,R,5Rは塩基性クロム酸鉛(basic lead chromate)を含み,Gは通常どちらも含まない。
JIS K 5110「黄鉛(顔料)及びモリブデートオレンジ(顔料)」
参考追記:カラーインデックス番号として,ピグメントオレンジ21,ピグメントイエロー34(黄鉛)及びピグメントレッド104(モリブデートオレンジ)に属し,汎用用途に適用する顔料の種類,品質及び試験方法について規定されています。
K5500
オーカー ochre 鉄鉱石が風化したものを含む黄色の土顔料。合成法による鉄黄が多用され,これを合成オーカーと称することがある。
参考追記:含水酸化鉄を主要顕色成分とする土壌由来の「黄土色」を呈する顔料,日本画で用いる顔料である天然岩絵具の「黄土」は黄土原鉱から作られる。
同様の色を英語でocherといい,日本語の外来語でオーカーと言う。ocherは彩度が高く明るいyellow ocherや,赤いred ocherなど幅広い色を含める広義の概念であり,黄土色のみを指すのではない。
K5500
カーボンブラック carbon black ガス状又は液状の炭化水素を不完全燃焼又は熱分解して作る。塗料用,インキ用,ゴム用などがある。原料の種類,燃焼,分解の条件などで粒子の大きさ及び性質が異なる。炉壁に炎を触れさせて作ったものをチャンネルブラック・ガスブラックといい,密閉したレトルトの中又は炉の中で不完全燃焼させて作ったものをファーネスブラックといい,予熱した炉の中で分解して作ったものをサーマルブラックという。JIS K 5107「カーボンブラック(顔料)」 K5500
群青 ultramarine bule pigment 白土,硫黄,炭酸ナトリウムなどを原料とし,粉砕・混合・焼成して作った青顔料。古くは,るり石を粉砕して作った。
JIS K 5112「群青(顔料)」
参考追記:群青(顔料)は,アルミニウム・ナトリウムけい酸塩複合体に,硫黄が結合していることを特徴とする無機顔料であり,その種類は,遊離硫黄の含有量(質量分率)によって次の通りとされています。種類A:0.1を超え0.5%以下,種類B:0.1%以下
K5500
紺青 iron blue pigment, milori bule, prussian blue ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸鉄(Ⅲ)(フェロシアン化第二鉄)を主成分とする青顔料。JIS K 5113 参照。 K5500
酸化鉄顔料 iron oxide pigment 酸化鉄を着色成分とする顔料。べんがら,鉄黄,酸化鉄粉などがある。また,薄片状で金属光沢をもつグレーのものもある。
参考追記:酸化鉄(顔料) は,酸化鉄及び水和酸化鉄を主成分とし,クロム酸鉛及び有機着色材料を含有しない顔料で,色は,通常,赤,黄色,褐色又は黒になります
K5500
酸化鉄粉 brown iron oxide 三酸化二鉄を主成分とする赤褐色ないし暗紫色の顔料。硫化鉄鉱の焼きかすなどから作る。 K5500
鉄黒 black iron oxide 四酸化三鉄を主成分とする黒顔料。 K5500
鉄黄 yellow iron oxide, yellow iron oxide pigment αFeO・OH を主成分とする黄色顔料。硫化鉄(Ⅲ)溶液を加水分解するか,アルカリで中和して作る。 K5500
二酸化チタン,チタン白 titanium dioxide, white titanium pigment 二酸化チタンを主成分とする白顔料。結晶形によって,アナタース形(anatase)とルチル形(rutile)とがある。塗料用のルチル形は,分散性・塗膜の耐候性の改善のために表面被覆処理したものが主に使用される。
JIS K 5116「二酸化チタン(顔料)」:二酸化チタンからなる顔料の品質及び試験方法について規定されています。
K5500
べんがら red iron oxide 酸化鉄(Ⅲ)を主成分とする顔料。黄味がかった赤から紫までの色相をもつものがある。
JIS K 5109「酸化鉄(顔料)」
K5500
リトポン lithopone pigment, lithopone 硫化亜鉛と硫酸バリウムの混晶と考えられる白顔料。通常,硫化亜鉛を27%以上含む。硫化亜鉛の含有量が多いほど隠ぺい力(※1),着色力が大きい。
隠ぺい力とは,塗膜が下地の色の差を覆い隠す度合のことです。黒と白とに塗り分けて作った下地の上に,同じ厚さに塗ったときの,塗膜の45度,0度拡散反射率又は三刺激値Yの比で表します。JIS K 5105「リトボン(顔料)」
K5500

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【その他の顔料】      
アルミニウム顔料 aluminum pigment (aluminium pigment), aluminum powder (aluminium powder), aluminum paste (aluminium paste) 金属アルミニウムのりん片状の粉末及びその粉末をミネラルスピリットなどに分散してペースト状にしたもの。アルミニウムペイント,さび止めペイント(※1),メタリックエナメルなどに顔料として用いる。塗膜形成時に塗料の膜の上層に層状に浮かぶもの(リーフィング形)と,浮かばないもの(ノンリーフィング形)とがある。
JIS K 5906「塗料用アルミニウム顔料」:塗料用のアルミニウム顔料について規定されています。
K5500
一酸化鉛 lead monoxide, litharge PbOの組成をもつ鉛の化合物。うす黄色の粉末。黄鉛・鉛ドライヤーの原料として用いる。JIS K 1456 参照。 K5500
雲母状酸化鉄顔料 micaceous iron oxide pigment 本質的に酸化鉄(Ⅲ)(Fe2O3)からなる精製鉱物(光を反射するヘマタイトとしても知られている。)又は製造された製品。色はグレーでメタリックつやがあり,多少薄片状を呈している。 K5500
けい石粉 silica けい石を粉砕して作った粉末。酸やアルカリに浸されにくい。目止め顔料,研磨材などに用いる。 K5500
黒鉛 graphite 天然産又は人工の炭素単体の粉末。六方晶形又は無定形。鉛筆,塗料などに用いる。 K5500
ご粉 gohun 貝がらを水洗,粉砕,水ひ して作った白い粉末。主成分は炭酸カルシウム。 K5500
リサージ litharge 一酸化鉛を主成分とする粉末。旧JIS K 1456。
参考追記:両性酸化物,赤色・正方晶系の室温で安定なα型,黄色・斜方晶系の300℃以上で安定なβ型がある。β型への転移温度は587℃だが,酸素分圧に依存する。α型の別称は密陀僧(みつだそう)・リサージ (litharge),β型の別称は金密陀(きんみつだ)・マシコート (massicot)。
古くより顔料として用いられてきた。クリスタル・ガラスの製造にも用いられる。 皮蛋(ピータン)の熟成を促進する黄丹粉の主成分も一酸化鉛である。
K5500
地の粉 zinoko 土性顔料の一種。けい酸アルミニウムを主成分とし,酸化鉄を少量含む。主に漆下地を作るのに用いる。 K5500
との粉 tonoko 酸化鉄を含んだ粘土を水ひして作った体質顔料。日本特有のもの。塗装下地剤を作るのに用いる。 K5500

用語 対応英訳 定義・解説 出典
【顔料の特性】      
アグリゲート凝集体 aggregate 通常の塗料又はインキ製造工程中に破壊されないほど互いに強く結合した顔料粒子の集合体。 また,分散系の中での粒子の凝集状態で,一次粒子が互いに面接触をして二次粒子を形成していて,強い機械力でないと再分散しにくい凝集状態をいう。 K5500
アグロメレート軟凝集体 agglomerate 通常の塗料又はインキ製造工程中に破壊される一次粒子,アグリゲート又はその両者の混合物の集合体。また,分散系の中で一次粒子が結合し二次粒子に凝集している状態で,一次粒子が互いに点又は線接触をしていて,機械力によって比較的容易に再分散するような状態をいう。 K5500
乾き色(顔料の) dry color of pigment (dry colour of pigment) 顔料が粉末状のときの色。dry colour は,白以外の黒を含む有色顔料を説明するのに用いられる用語(BS)。 K5500
着色力 tinting strength ある色の塗料又は顔料に混ぜて色を変えるための,塗料又は顔料の性能。主として顔料についていう。JIS K 5101-3-4 参照。 K5500
吸油量 oil absorption, oil absorption value 顔料を液体と機械的に練り合わせて堅いペースト状にするために必要な量。ペイント,エナメルペイントなどを作るときに,個々の顔料を練り合わせるのに必要なボイル油,ワニスなどの量を知るために重要であり,顔料の粒度,表面積の大小の知見にも役立つ。通常は,顔料100gに対する煮あまに油(又は精製あまに油)のml数又はg数で表す。JIS K 5101 参照。 K5500
ぬれ色 wet color (wet colour) 顔料が液体でぬれているときの色。乾燥塗膜が水などでぬれたときの色をいうこともある。 K5500
ふるい残分 residue on sieve 試験用ふるいでふるったときに,通過しないでふるいに残るものの,全体に対する割合。
JIS K 5101「顔料試験方法」,JIS Z 8801-1「試験用ふるい-第1部:金属製網ふるい」,JIS Z 8801-2「験用ふるい-第2部:金属製板ふるい」,JIS Z 8801-3「試験用ふるい-第3部:電成ふるい」
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分散 dispersion 一つの相を作っている物質の中に他の物質が微粒状になって散在している現象。 K5500
分散度 fineness of grid ミルベース中の,又は塗料中の最大粒子の大きさに関連する用語。規定の試験条件の下で,標準ゲージで製品中のはっきりした固形粒子が容易に認められる溝の深さを示す数値の読みで表す。
JIS K 5600-2-1「塗料一般試験方法-第2部:塗料の性状・安定性-第1節:色数(ガードナー法)」
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見掛け比容,見掛け密度 apparent specific volume, apparent density 単位質量の顔料を落下して自然にたい積又はタップしたときに示す見掛けの容積(又は見掛けの密度)。見掛けの比容は ml/g で表し,見掛け密度は g/ml で表す。見掛けの比容はかさ,見掛け密度はかさ比重のことをいう。
JIS K 5101「顔料試験方法」
備考:1.BS 2015 ではタップした見掛け密度,見掛け比容をそれぞれ”bulk density”,”bulking volume”といい,タップしていない見掛け密度を”apparent density”と区分している。
2.ASTM では,見掛け比容を”bulking value”といい,lb/Gal で表している。
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リーフィング leafing りん片状の顔料を含む塗料を塗ったとき,塗膜形成時に,その顔料片が平行して重なり合って塗料の膜の表層に配列する現象。
リーフィング形アルミニウム粉をワニスと混合して作るアルミニウムペイントでは,この現象が顕著で,塗面は,連続して輝いた金属膜のように見える。リーフィングは,顔料とビヒクルとの両者の性質の相互作用によって,塗膜形成時に起こる。
参考追記:アルミニウムペイントは,アルミニウム粉を顔料分とするエナメルペイントです。アルミニウム粉又はアルミニウム粉のペーストと油ワニスとを,あらかじめ混合したものと,別々の容器に分けて1組としたものとがあります。さび止めペイントの上塗り,熱線反射塗料,銀色塗装などに用います。
JIS K 5492「アルミニウムペイント」:熱線の反射,水分の透過防止などの目的で主として屋外の銀色塗装に用いるアルミニウムペイントについて規定しています。
K5500
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