金属被覆材の試験用語

 亜鉛めっき鋼,ぶりきなど被覆鋼に適用される被覆材の試験用語について,JIS G 0202「鉄鋼用語(試験)」及びJIS H 0400「電気めっき及び関連処理用語」の中から抜粋し,五十音順で紹介します。
用語 対応英訳 定義・解説 出典
アルカリ試験 alkaline test 亜鉛めっきの合金層の健全性を調べる試験。試験片を75~80℃の水酸化ナトリウム溶液に浸漬してめっき層を溶解すると,合金層で激しく水素が発生した後,鉄素地に達して反応が終止する。試験片の浸漬開始から反応が終止するまでの時間によってめっきの性状を調べる。 G0202
EDTA法 EDTA method 亜鉛を希塩酸中に溶解し,EDTA(エチレンジアミン 4-酢酸 2ナトリウム)溶液で滴定し,付着量を測定する試験。亜鉛の付着量試験に用いられる。 G0202
塩化アンチモン法 antimony chloride method 塩化アンチモンをインヒビターとして加えた塩酸溶液を用いて,付着している亜鉛を合金層に達するまで溶かすことによって付着量を求める試験。亜鉛の付着量試験に用いられる。 G0202
鉛筆硬度試験 pencil hardness test 高度の異なる鉛筆を用いて試験面に対し45°を保ちつつ線引きし,塗膜の表面硬度を調べる試験。使用する鉛筆の硬度記号で表示する。 G0202
外観試験 visual test めっき面の欠陥の有無を目視によって調べる方法。 H 0400
硬さ試験 surface hardness tes 皮膜の表面硬さを調べる方法。
参考:硬さ試験方法として,ブリネル硬さ試験方法(JIS Z 2243),ビッカース硬さ試験方法(JIS Z 2244),ロックウェル硬さ試験方法(JIS Z 2245),ショア硬さ試験方法(JIS Z 2246)が規定されている。
H 0400
蛍光X線法 fluorescent X-ray method X線をめっき面に照射した場合に,めっき厚さに比例して放射される蛍光X線量を測定して検量曲線から付着量を求める試験。亜鉛,すず,アルミニウム,クロムなどの付着量試験に用いられる。 G0202
碁盤目エリクセン試験 Erichsen cupping test (at cross scored portion) 塗膜に碁盤目を切り,塗油しないでエリクセン試験を行い,塗膜のはく離や割れを調べ,付着性を評価する試験。次の二つの方法がある。
(1) 塗膜にはく離や割れを生じたときの押出深さを調べる。
(2) 規定の深さだけ押し出したとき,塗膜にはく離や割れを生じたかどうか調べる。
G0202
碁盤目試験 cross cut test, lattice pattern cutting test はり又はカッタナイフなどで塗膜を貫通する碁盤目を切り,塗膜の傷やはく離状態を調べて,付着性を評価する試験。 G0202
酸化膜試験 oxide film weight test, coulometric test 溶液中で試料を陰極として電解し。試料の酸化膜の還元に要する電気量からぶりきの表面の酸化膜の厚さを測定する試験。 G0202
衝撃変形試験 ball impact test 先端に丸みをもつ撃ち型と,その丸みに合うくぼみをもつ受け台の間に,試験片の塗膜面を上向き又は下向きにして挟み,一定の質量の重りを規定した高さから撃ち型の上に落とし,塗膜のはく離や割れを調べて付着量を評価する試験 G0202
耐食性試験 corrosion resistance test, corrosion test 屋外,人工的腐食環境などに試料を暴露し,その耐食性を調べる方法。
参考:JIS H 8502 には,屋外暴露試験方法,連続噴射試験方法,サイクル試験方法,コロードコート試験方法,ガス腐食試験方法が規定されている。
H 0400
耐磨耗試験 abrasion test, wear resistance test 磨耗に対する抵抗性を調べる方法。
参考:JIS H 8503 には,往復運動磨耗試験方法,平板回転磨耗試験方法,両輪駆動磨耗試験方法など,5種類の試験方法が規定されている。
H 0400
チオシアネイト法 thiocyanate method 腐食液を用い,ピンホール部分から鉄を溶出させ,チオシアン酸鉄に変えて比食分析し,有孔度を調べる試験。 G0202
電解はく離法 electrolytic stripping method 電解液中でめっき層を電気化学的に除去するときの試料の電位・時間曲線を求め,これからめっきの付着量を測定する試験。亜鉛,すず,クロムなどの付着量試験に用いられる。 G0202
電解よう素法 Bendix method 素焼きの円筒中の炭素棒を陰極とし,KIO3-KI 溶液の適当量を加え,塩酸中において電解し,電解液にでん粉溶液を少量加え,チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して,付着量を測定する試験。すずの付着量試験に用いられる。 G0202
塗油量測定試験 oil film weight test ぶりき及びティンフリースチールの酸化膜上の塗油量を測定する試験。表面圧テンビン法,偏光法などがある。 G0202
熱湯法 hot water method 熱湯(90~95℃)中に試験片を浸漬して,ピンホールやめっき面のきずなどを調べる試験。 G0202
用語 対応英訳 定義・解説 出典
はんだ静試験 solderability test ブリキのはんだのつきやすさ,強度などを調べる試験。はんだ付着強度試験,はんだ広がり試験,はんだ毛細管上昇試験,はんだの濡れ速度試験などがある。 G0202
はんだの濡れ速度試験 solder wetting rate test 片持梁の先端につるしたぶりき試験片の先端をはんだ浴に浸漬し,試験片がはんだにぬらされ始める時間,ぬれの速度及びぬれの完了時間を調べる試験。高速製缶への適応性を評価するのに用いられる。 G0202
はんだの広がり試験 solder spreading test 所定の大きさのはんだをぶりき試験片の上に置いて一定の温度に加熱し,溶融したはんだの広がった面積ではんだの濡れの要否を評価する試験。 G0202
はんだの毛細管上昇試験 solder capillary rise test 毛細管接合部をつくったぶりき試験片をはんだ浴中に垂直に浸漬した後,取り出して水中で急冷し,はんだ浴の表面から毛細管現象で上昇したはんだの高さを調べる試験。 G0202
はんだ付着強度試験 soldered joint strength test 2枚のぶりき試験片にパーム油を塗り,はんだ浴中に規定深さに離して浸漬した後,この2枚を密着させて,さらに浸漬を継続した後取り出して急冷し,これを引張試験することによってはんだの付着強度を調べる試験。 G0202
描画試験 spiral scoring test 専用の試験機で,一定の荷重のもとに鋼針又はダイヤモンド針を用いて塗膜面にらせんんを描き,塗膜のはく離状態を観察して」,塗膜の付着性を評価する試験。荷重,らせんの半径,Ⅰ回転の位相間隔及びらせんの長さを指定して行う。 G0202
表面テンビン法,ハイドロフィルバランス法 hydrophil balance method ぶりき及びティンフリースチールの表面の油膜を水面に移行させ,水面に広がった油膜の面積を測定して油の質量を求める方法。 G0202
付着量試験 coating mass test 金属素地にめっきされた付着量を測定する試験。めっきの種類によって種々の測定方法がある。 G0202
偏光法,エリプソメータ法 ellipsometric method ぶりき及びティンフリースチールの表面に平行偏光したナトリウムランプからの単色光を照射し,光学的性質を利用してエリプソメータで塗油量を測定する方法。 G0202
β線法 β-ray method β線がすずめっき層を通って鉄素地から反射してくる際の減衰量から付着量を測定する試験。すずの付着量試験に用いられる。 G0202
膜厚試験 coating thickness test めっき,塗装,酸化被膜などの皮膜厚さを測定する試験。膜厚試験には。次の四つの方法がある。
(1) 直接,マイクロメータや顕微鏡で測定するもの。
(2) 化学的に皮膜を溶解して,皮膜質量から膜厚を算出するもの。
(3)電気化学的に皮膜を電解はく離して,電位の時間的変化を調べ,皮膜溶解に消費した電気量から算出するもの。
(4) その他,電気磁気的方法,放射線などを利用するもの。
G0202
膜厚試験 film thickness test めっき皮膜の厚さを調べる方法。
参考:JIS H 8501 には,顕微鏡断面厚さ試験方法,渦電流式厚さ試験方法,蛍光X線試験方法などの膜厚試験方法が規定されている。
H 0400
密着性試験 adhesion test 皮膜の密着性を調べる方法。
参考:JIS H 8504 には,熱試験方法,引きはがし試験方法,引張試験方法,曲げ試験方法などの密着性試験方法が規定されている。
H 0400
有孔度試験 porosity test めっきのピンホールの有無を調べる試験。チオシアネイト法,熱湯法などがある。 G0202
有孔度試験 porosity test 皮膜のピンホールの有無を調べる方法。
参考:耐食性,電気絶縁性などの試験に用いる。
H 0400
ラッカフロー試験 lacquer flow test ぶりきの一端に,調べようとする塗料を少量たらして,ぶりき板面に広がる様子によって塗装性を評価する試験。 G0202
硫酸銅試験 cupric sulphate test 試験片を遊離硫酸を中和した常温の硫酸銅溶液に1分間ずつ数回浸漬し,イオン化傾向の差を利用してめっきを溶出させ,銅が鉄素地に付着するまでの回数でめっきの付着量の均一性を調べる試験。 G0202
ローラコーティング試験 roller coating test 塗膜の厚さが均一になるように塗料をローラで塗布して塗料がはじかれる程度を観察し,ぶりきの塗装性の良否を評価する試験。 G0202
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