溶射方式,溶射材別の分類
JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」及びJIS H 8200「溶射用語」の中から,溶射の分類に関連する主な用語を抜粋しました。用語は【方式別分類】,【材料別分類】,【目的別分類】に分けて紹介します。
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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方式別分類 | |||
溶射 | thermal spraying | 燃焼又は電気エネルギーを用いて溶射材料を加熱し,溶融又はそれに近い状態にした粒子を素地に吹き付けることによる皮膜の形成。 | H0201 |
溶射 | thermal spraying | 燃焼又は電気エネルギーを用いて溶射材料を溶融又はそれに近い状態にした粒子を基材に吹き付けて被膜を形成すること。 | H8200 |
ガス式溶射 | oxygen fuel spraying | 酸素と可燃性ガスとの燃焼炎又は爆発のエネルギーを用いて行う溶射の総称。ガス式溶射にはフレーム溶射及び爆発溶射がある。 | H8200 |
フレーム溶射 | flame spraying | 酸素と可燃性ガスとの燃焼炎を用いて線状,棒状又は粉末状の溶射材料を加熱し。溶融又はそれに近い状態にして基材に吹き付けて被膜を形成する溶射。 溶射粒子の加速に圧縮空気のジェットを用いる場合がある。フレーム溶射には,溶線式フレーム溶射,溶棒式フレーム溶射,粉末式フレーム溶射及び高速フレーム溶射がある。 | H8200 |
溶線式フレーム溶射 | wire flame spraying | 線状の溶射材料を用いて行うフレーム溶射。 | H8200 |
溶棒式フレーム溶射 | rod flame spraying | 棒状の溶射材料を用いて行うフレーム溶射。 | H8200 |
粉末式フレーム照射 | powder flame spraying | 粉末状の溶射材料を用いて行うフレーム溶射。 | H8200 |
高速フレーム溶射 | high velocity flame spraying | 燃焼炎を熱源とするフレーム溶射法の一種。燃焼室の圧力を高めることによって,連続燃焼炎でありながら爆発炎に匹敵する高速火炎を発生させる。 | H8200 |
爆発溶射 | detonation flame spraying | 溶射ガンの中で酸素と可燃ガス(アセチレンなど)との混合ガスの爆発エネルギーを用い,高速で溶射材料を基材に吹き付けて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
電気式溶射 | electric spraying | 電気エネルギーを用いて行う溶射の総称。 電気式溶射には,アーク溶射,プラズマ溶射及び線爆溶射,レーザ溶射がある。 | H8200 |
アーク溶射 | electric arc spraying, arcspraying | 2本の金属ワイヤ(溶射材料)の間にアーク放電を発生させ,この放電エネルギーで金属ワイヤを溶融し,圧縮空気によって微粒化した溶射材料を基材に吹き付けて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
プラズマ溶射 | plasma spraying | 不活性ガスを通電し,発生させたプラズマジェットを用いて溶射材料を基材に吹き付けて被膜を形成する溶射。 溶射材料は,主として粉末状である。プラズマ溶射には,作動ガスにアルゴン,ヘリウム,窒素,水素などを用いる方式と,水の熱分解によって生じる酸素イオン及び水素イオンを用いる水プラズマ溶射とがある。 | H8200 |
水プラズマ溶射 | water stabilizer plasma spraying, liquid-stabilized plasma spraying | プラズマ溶射ガンの中に供給した水がアークによる熱分解によって生じる酸素イオンと水素イオンを作動ガス体とするプラズマ溶射。 | H8200 |
線爆溶射 | wire explosion spraying | 線状の金属の溶射材料を瞬間的通電によって爆発的に溶融,飛散させ,その微粒子を基材に吹き付けて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
レーザ溶射 | laser spraying | レーザを熱源とする,ロッド,ワイヤ形状の材料を用いた溶射。 | H8200 |
減圧溶射 | low pressure spraying | 大気圧より低い圧力の雰囲気で行う溶射。 | H8200 |
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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材料別分類 | |||
金属溶射 | metal spraying | 溶射材料に金属を用いて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
亜鉛溶射 | zinc spraying | 溶射材料に亜鉛を用いて行う溶射。 主として,鉄鋼構造物の防食の目的で用いる(JIS H 8300参照)。 | H8200 |
アルミニウム溶射 | aluminium spraying | 溶射材料にアルミニウムをもちて行う溶射。 主として,鉄鋼構造物の防食の目的で用いる(JIS H 8300参照) | H8200 |
亜鉛-アルミニウム合金溶射 | zinc-aluminium alloy spraying | 溶射材料に亜鉛-アルミニウム合金を用いて行う溶射。 主として,鉄鋼構造物の防食の目的で用いる(JIS H 8301参照)。 | H8200 |
アルミニウム-マグネシウム合金溶射 | aluminium-magnesium alloy spraying | 溶射材料にアルミニウム-マグネシウム合金をもちて行う溶射。 主として,鉄鋼構造物の防食の目的で用いる(JIS H 8301参照) | H8200 |
肉盛溶射 | cladding byspraying, build up spraying | 機材の摩耗した部分及び寸法不足の部分に寸法回復を目的として盛り上げる溶射(JIS H 8302参照)。 | H8200 |
自溶合金溶射 | self-fluxing alloy spraying | 溶射材料に自溶合金を用いて行う溶射(JIS H 8303参照)。 主として鉄鋼材料に対し耐摩耗性,耐食性,耐熱性などを付与する目的で用いる。 | H8200 |
セラミック溶射 | ceramic spraying | 溶射材料にセラミックを用いて行う溶射(JIS H 8304参照)。 主として機械部品に対し耐摩耗性,耐熱性,断熱性,耐食性などを付与する目的で用いる。 | H8200 |
サーメット溶射 | cermet spraying | 溶射材料に金属とセラミックとを成分とする材料を用いて行う溶射(JIS H 8306参照) | H8200 |
プラスチック溶射 | plastic spraying | 溶射材料にプラスチックを用いて行う溶射(JIS K 6766参照)。 | H8200 |
酸化アルミニウム溶射 | alumina spraying, aluminium oxide spraying | 溶射材料にアルミニウムの酸化物(アルミナ)を用いて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
酸化アルミニウム・酸化チタン溶射 | alumina-titania-spraying, aluminium oxide-titanium oxide spraying | 溶射材料にアルミニウムの酸化物(アルミナ)とチタンの酸化物(チタニア)との混合物及びアルミニウムとチタンとの化合物の酸化物並びにこれらの複合物を用いて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
酸化チタン溶射 | titania spraying, titanium oxide spraying | 溶射材料にチタンの酸化物(チタニア)を用いて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
酸化クロム溶射 | chromia spraying, chromium oxide spraying | 溶射材料にクロムの酸化物(クロミア)を用いて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
スピネル溶射 | spinel spraying, (Al2O3・MgO) spinel spraying | 溶射材料にスピネル構造(アルミナ+マグネシア)をもつ材料を用いて被膜を形成する溶射(JIS H8304参照)。 | H8200 |
酸化ジルコニウム溶射 | zirconia spraying, zirconium oxide spraying | 溶射材料にジルコニウムの酸化物(ジルコニア)を用いて被膜を形成する溶射。 | H8200 |
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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目的別分類 | |||
防食溶射 | spraying for corrosion prevention | 基材金属が腐食されるのを防止する目的で行う溶射。 | H8200 |
防せい溶射 | spraying for rust prevention | 基材金属にさびが発生するのを防止する目的で行う溶射。 | H8200 |
耐食溶射 | corrosion resistant spraying, spraying for corrosion resistance | 腐食に対して耐久性のある皮膜を形成する目的で行う溶射。 | H8200 |
内面溶射 | inside spraying, internal spraying | パイプ,シリンダなどの内面などに施工する溶射。 | H8200 |
複合溶射 | composit spraying | 2種類以上の溶射材料を同時に溶射して,皮膜を形成する溶射。 | H8200 |
耐摩耗溶射 | wear resistant spraying | 耐摩耗性のある皮膜を形成する目的で施工する溶射。 | H8200 |
補修溶射 | repair by thermal spraying, maintenance by spraying | 損傷したもの(部品)などに溶射被膜を形成することで復元する溶射。 | H8200 |
耐熱衝撃溶射 | spraying for thermal shock resistance coating | 体熱衝撃性に優れる被膜を形成する溶射。 | H8200 |
耐熱溶射 | heat resistant spraying | 耐熱性のある皮膜を形成する目的で行う溶射。 | H8200 |
熱遮蔽溶射 | spraying for thermal barrier coating | 基材への熱移行を極小にするための高熱放射率をもつ被膜を形成する目的で行う溶射。 | H8200 |
断熱被膜 | thermal barrier coating (TBC) | 断熱の目的で形成する皮膜。 | H8200 |
高温酸化防止溶射 | spraying for high temperature oxidation prevention | 高温酸化を防止する国的で行う溶射。 | H8200 |
ガス透過溶射 | spraying for high permiability coating | ガス透過性に優れる多孔性被膜を形成する目的で行う溶射。 | H8200 |
絶縁溶射 | spraying for electric insulation | 電気絶縁性に優れる被膜を形成する目的で行う溶射。 | H8200 |
熱伝導溶射 | spraying for themal conduction coating | 熱伝導性に優れる被膜を形成する目的で行う溶射。 | H8200 |
電気伝導溶射 | spraying for electrical conduction coating | 電気伝導性に優れる被膜を形成する目的で行う溶射。 | H8200 |
傾斜組成溶射 | graded composition coating | 皮膜の応力緩和を図るために熱膨張係数の異なる溶射材料の組成を傾斜的に配分させた構造の溶射。漸変溶射ともいう。 | H8200 |
溶射成形 | spraying forming | 離型剤を塗布した型の上に形成した溶射被膜を型から分離し成形物にする溶射。 | H8200 |
アブレイダブル皮膜 | abradable coating | 被削性に優れた溶射被膜の総称。部品間の間隔調整の目的で用いる。 | H8200 |