めっき被膜の変状関連
JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」,JIS H 8641「溶融亜鉛めっき」の中から,めっき皮膜に関する用語を抜粋しました。用語は【IS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】,【JIS H 8641「溶融亜鉛めっき」】に分けて紹介します。
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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陽極酸化処理,陽極処理 | anodizing, anodic treatment, (USA, anodising) | 陽極における電気化学的な酸化処理の総称。 | H0400 |
陽極皮膜 | anodic coatings | a)電解酸化処理によって,金属表面構造が変化して形成される保護,装飾又は機能的な皮膜。 b)素地金属より卑な金属皮膜。 | H0400 |
陽極酸化皮膜 | anodic oxide coating, anodic oxide film | 陽極酸化処理によって生成した皮膜。 | H0400 |
後処理 | post treatment | メッキの後工程として使用目的に適するようめっき皮膜に施す処理。 | H0400 |
ベーキング | baking, (USA, stoving) | 素材のひずみ除去又はめっきの水素除去を目的として行う熱処理。 | H0400 |
応力除去 | stress relief | 適切な温度に加熱保持して,めっき皮膜及び素地金属の残留応力を減少させる操作。 | H0400 |
水素ぜい化除去 | hydrogen embrittlement relief, (UK, de-embrittlement) | 表面処理後,水素吸蔵によるぜい化を減少させたり除去するために行う処理。 | H0400 |
無めっき | bare spot, void, uncovered | めっきが付いていない状態。低電流密度部分などに生じやすい。 | H0400 |
割れ | crack, crazing | 皮膜表面で無秩序,無方向に割れる現象。 | H0400 |
ひび割れ | crazing | 腐食試験において,自然に発生した細かい網状模様の割れ。 | H0400 |
はく離 | peeling | めっき層が素地又は下地からはがれる現象。 | H0400 |
ピット | pit | めっき面に生成される巨視的な穴。 | H0400 |
ピンホール | pore, pinhole | 素地又は下地層まで達するめっきの細孔。 | H0400 |
ふくれ,膨れ | blister | めっき層の一部が素地又は下地層を密着しない状態。 | H0400 |
水切れ | water break | 表面が汚れているために,水皮膜が不連続に現れる現象。 | H0400 |
樹枝状めっき | trees dendrite, trees | 被めっき物に生じる枝状又は不規則な突起物。 | H0400 |
こぶ状生成物 | nodule | 被めっき物に生じる丸みをおびた突起物 | H0400 |
ざらつき | rough surface, rough deposits | めっき浴中の固体浮遊物がめっき層の中に入り込んで生じる小突起。 | H0400 |
しみ出し | spotting out | めっき又はめっき後の仕上げた表面上に斑点(はん点)や汚点が,時間が経過してから遅れて出現する現象。 | H0400 |
焦げ | burnt deposit | 粗いめっきで,主に過大な電流密度の場合に生じる表面の変質。やけともいう。 | H0400 |
バーンオフ | burn-off | 無電解めっきした後に電気めっきをするとき,過大な電流密度の通電又は電気的接触面積の不足によって,非導電性下地から無電解めっき皮膜がはく離,消失してしまう現象。焼け抜けともいう。 | H0400 |
スポーリング | spalling | 特異な熱膨張又は収縮が原因で,皮膜が割れたり,欠けたりする現象。 | H0400 |
変色 | tarnish, tarnishing | 環境などによって,めっき面が本来の色調を失う現象。 | H0400 |
乳白めっき | milky surface, dull stain, slighty milky | クロムめっきの場合に,電流密度が低すぎるか,又はめっき浴の温度が高すぎる場合に生じる光沢の乏しいめっき。 | H0400 |
用語 | 対応英訳 | 定義・解説 | 出典 |
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めっき被膜 | 以下JIS規格に記載なし | 素材上に形成された亜鉛及び亜鉛と鉄のとの合金からなるめっき層。めっき表面から素材の表面までをいう。 | H8641 |
付着量 | 単位面積当たりのめっき被膜の質量。1平方メートル当たりの質量をグラム表示したものであり,g/m2で表示する。 | H8641 | |
不めっき | 局部的にめっき被膜がなく,素材面の露出しているもの。 参考:不めっきが小さい場合は,周辺亜鉛の犠牲的保護作用によって耐食上あまり影響はない。保護作用の効果が及ぶ不めっき部の大きさは,実験的にはφ5.5mm又は5mm幅までである。 | H8641 | |
きず | めっき作業中,めっき用具とめっき表面とが接触したこん(痕)。 参考:めっき表面の傷は,発生位置,大きさ及び深さによってその有害性を判断する必要がある。 | H8641 | |
たれ | 端部又は部分的に,亜鉛が多量に付着しているもの。 参考:一般的にやけの発生しやすい素材は,めっき温度を低くしてめっき作業をするため亜鉛の流動性が低下し,たれを発生させてしまうことが多い。たれの部分をやすりなどで研磨し,平滑面を得ようとするときは,素材表面を露出させないようにする。実用上障害とならない限りそのままにしておいたほうがよい。 | H8641 | |
シーム | 素材にきずがあると,めっきしたときに,めっき表面に特徴ある線状の凹凸になるめっき。 参考:シームは,通常めっき被膜が形成されているのでそのまま使用しても問題はない。しかし,その面を平滑にしようとすると素材表面を露出することがある。 | H8641 | |
ざらつき | 微粒状の突起があり,懸濁浮遊物質(ドロス)が付着した部分。 参考:耐食性には影響はない。 | H8641 | |
かすびき | 表面に亜鉛酸化物又はフラックス残差が著しく付着しているもの。 一般に耐食性に影響がある。したがって,付着した場合はやすりなどで除去しておく方がよい。 | H8641 | |
やけ | 金属亜鉛の光沢がなく,表面がつや消しまたは灰色を呈したもの。甚だしい場合には暗灰色となる。 参考:この現象は合金層がめっき表面に露出したものであり,大気中での耐食性には影響ない。やけは,密着性さえ十分であれば実用上の欠陥とはならないので,外観基準を設定する場合は,この点を考慮することが必要である。なお,金属亜鉛の光沢は酸化の進行とともに失われ,やけの表面と類似した色調となってくる。素材の鋼製造工程(脱酸法)によってけい素含有量に違いがあり,その影響でやけの発生程度に差が生じる。 | H8641 | |
変色 | 保管中の薬品などの付着およびめっき浴からの引き上げ時に,めっき表面が変色したもの。 参考:めっき引き上げ時に生じる変色は,光の干渉・反射に起因したもので,耐食性に影響はない。 | H8641 | |
白さび | 保管中に雨水の付着,結露などによって生じた塩基性炭酸亜鉛などの腐食生成物。 参考:白さびによるめっき被膜の消耗はわずかで,耐食性にはほとんど影響はない。 | H8641 |