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JIS Z 2381:2001「大気暴露試験方法通則」
JIS Z 2381(その1)目次に戻る。
【暴露試験方法】
【一般的な要求事項】
暴露試験装置
暴露試験装置として満たすべき条件は,次による。
a) 暴露試験装置は,暴露架台,試験箱,試料保持枠などで構成され,暴露試験に適した堅ろうな構造とする。
b) 暴露試験装置の構成材料は,暴風雨,積雪荷重,及び暴露架台の全面に試料を取り付けた場合の最大荷重に耐える強度と耐久性をもつものとする。
c) 暴露試験装置の構成材料は,試料の化学的性質,物理的性質,及び性能の経時変化に影響を与えない耐食性のあるステンレス鋼,アルミニウム合金,塗覆装を施した鉄鋼などの金属の形材,適切な防腐処理を施した木材などの不活性な材料とする。
d) 暴露試験装置は,暴風雨,積雪,凍上などの影響を受けないように,適切かつ,堅固に設置する。
e) 暴露架台,試料保持枠,試験箱,及びこれらに附属する取付け器具類は,暴露試験方法の種類・目的,試料の種類,形状,寸法,及び暴露試験条件の設定に適した構造とする。
f) 試料と直接接触する試料保持枠,試料取付け器具などの部材は,試料の化学的性質,物理的性質,及び性能の経時変化に影響を及ぼさない不活性な材料とする。
g) 腐食生成物による汚染などが暴露試験を行う試料に影響を及ぼすおそれがある場合は,暴露架台・試料保持枠・試験箱・金具類などの部材,遮へい構造物の部材,応力,又はひずみを加えるための装置類,及び附属器具類には,防せい・防腐処理などの適切な保護処理を施す。
h) 試料の取付け機構は,試料の自由変形を妨げず,試料が脱落するおそれがない構造とし,試料の取付け及び取外しが容易で,安全に取り扱うことができるものとする。
i) 暴露試験装置は,試料面が規定の暴露方位及び角度に設定でき,維持できる構造とする。
j) 暴露試験装置の接地面から暴露試験を行う試料の最下端部までの距離は,0.5m以上とする。ただし,暴露した試料の材料又は製品規格に,接地面からの距離が規定されている場合は,その規定による。
参考 接地面から暴露試験を行う試料の最下端部までの距離については,日本工業規格,及び国際規格(ISO)に次のような規定例があるので,参照することが望ましい。
JIS K 7219 : 1998 プラスチック−直接屋外暴露,アンダーグラス屋外暴露及び太陽集光促進屋外暴露試験方法(ISO 877 Plastics−Methods of exposure to direct weathering, to weathering using glass-filtered daylight and to intensified weathering by daylight using Fresnel mirrorsの翻訳規格)では,0.5m以上。
JIS H 8502 : 1999 めっきの耐食性試験方法では,0.5m以上。
JIS H 0521 : 1996 アルミニウム及びアルミニウム合金の大気暴露試験方法では,0.5m以上。
ISO 8565 Metals and alloys−Atmospheric corrosion testing−General requirements for field testsでは,0.75m以上。
ISO/DIS 2810 Paints and varnishes−Notes for guidance on the conduct of natural weathering testsでは,0.45m以上。
暴露試験面の方位及び角度
暴露試験面の方位及び角度は,次による。
a) 暴露試験面の方位は,赤道面とする。
b) 暴露試験面の角度は,水平面から45°(許容される場合は30°)とし,試験面を天向きに暴露する。ただし,暴露する試料の材料,又は製品規格に規定がある場合は,その規定による。
c) 遮へい暴露試験における試験面の角度は,水平面に対して0°,30°,45°,60°又は90°のいずれかとする。ただし,別に規定,又は受渡当事者間の協定がある場合は,それによる。
d) 太陽放射光の影響を大きく受けるプラスチックの場合には,年間に最も多く太陽放射光を受ける角度とし,水平面からの暴露試験面の角度は,暴露試験場の緯度マイナス10°の角度にすることが望ましい。
e) 金属材料の場合には,腐食に大きな影響を及ぼす大気汚染因子の発生源に試験面を向けて暴露試験を行ってもよい。
f) 建築材料の場合には,実際に使用される状態を模擬した方法で暴露試験を行ってもよい。
暴露試験用の試料の前処理
暴露試験用の試料は,暴露試験結果の変動を少なくして再現性をよくする目的で,必要に応じて,洗浄,状態調節,切り口,及び裏面を保護するなどの前処理を行う。
試料の取付け及び取外し
試料の暴露試験装置への取付け,及び取外しは,次による。
a) 暴露試験の実施に際しては,清浄な手袋を使用して試料を取り扱う。
b) 暴露試験の目的に従い,規定の暴露方位,及び暴露角度に設置した暴露試験装置に試料を取付ける。
c) 試料の取付けは,試料が自由に変形できるゆとりを持たせる。ただし,使用状態に合わせて試料を固定する場合,又は応力を負荷した状態で暴露試験を行う場合はこの限りでない。
d) 暴露試験に影響を与えないようにするため,試料相互,及び試料と他の物質とが接触しないように試料を暴露架台に取付ける。
e) 試料,試料保持枠などからの腐食生成物,雨水を含んだ汚染物質などが他の試料表面に滴下しないように取付ける。
f) 試料を取付け,及び取外すときは,試料の表面に指紋,きず,汚れ,変形などの暴露試験結果に影響を及ぼす原因を作らないように注意する。
g) 試料が暴露架台,試料保持枠,試料取付け器具などに接触して腐食などの異常を起こすおそれがある場合は,暴露架台,試料保持枠,試料取付け器具などに適切な絶縁処置を施す。
暴露試験期間中の試料の取扱い
暴露試験期間中の試料の取扱いは,次による。
a) 暴露試験期間中は,規定された条件に正しく維持されるように試料を適切に管理する。
b) 暴露試験期間中の試料の洗浄は,通常,行わない。ただし,試料の洗浄を行う場合は,暴露試験の目的,試料の種類などによって,その方法を定めて実施する。
c) 暴露試験の中間に実施する評価試験のために試料の洗浄,観察などを行う場合は,試料に指紋,きず,変形など,継続して行う暴露試験に影響を及ぼす原因を作らないように注意する。
d) 暴露試験期間中に力学的性質などの評価試験を行った結果,著しいひずみ,又はきずが生じた試料は,継続して暴露試験を行ってはならない。
e) 試料の切り口の保護処理が損傷した場合は,補修する。
f) 積雪などに対する処置は,暴露試験の目的,試料の種類などによって定める。
標準試験片
標準試験片は,次による。
a) 暴露試験を行う試料は,地域,気象,暴露試験の開始時期などの影響を大きく受けるので,標準試験片を同時に暴露して,それらの暴露試験結果を相対的に比較することが望ましい。
b) 標準試験片は,暴露試験による化学的性質及び物理的性質の変化の傾向が既知であるものを使用する。
c) 金属材料の標準試験片は,JIS Z 2383「大気環境の腐食性を評価するための標準金属試験片及びその腐食度の測定方法」に規定する炭素鋼,耐候性鋼,銅,亜鉛,アルミニウム合金,又はステンレス鋼のいずれかを用いることが望ましい。ただし,規定がない材料については,当事者間の協議によって標準試験片を決めることができる。
【暴露試験方法の種類別の要求事項】
それぞれの暴露試験方法における要求事項は,次による。
直接暴露試験方法
この試験方法は,日照,雨,風などが直接影響する大気環境に試料を暴露して,それの化学的性質,物理的性質,及び性能の変化を調査する暴露試験方法である。
a) 直接暴露試験に用いる暴露試験装置は,次による。
1) 日照,雨,風などの大気環境に試料を直接に暴露することができる構造とする。
2) 試料に試験の目的以外の外力が加わらないように,暴露架台に試料を直接取り付けられるか,又は暴露架台の試料保持枠に取り付けて固定できる構造とする。
3) 日陰,水滴の落下,試料以外からの腐食生成物などによる汚染などが,暴露試験期間中の試料に影響を与えない構造とする。
b) 試料相互間の接触による影響が生じないように,適当な間隔をあけて試料を取り付ける。
アンダーグラス暴露試験方法
この試験方法は,雨,雪などの直接的な影響を除くために,上面を板ガラスで覆った試験箱内に試料を取り付け,板ガラスを透過した太陽放射光に暴露して,試料の化学的性質,物理的性質及び性能の変化を調査する暴露試験方法である。
a) 試験装置
アンダーグラス暴露試験に用いる暴露試験装置の構造,及び取扱いは,次による。
1) 上面を板ガラスで覆った試験箱は,規定の角度で試料を取り付けることができる構造とする。
2) 暴露架台などに規定の角度で安定した状態で試験箱を取り付けることができる構造とする。
3) 試験箱の構造の型式は,次の3種類とする。
3.1) 自然通風型:雨水の影響を受けず,外気が自由に流通し,試験箱内の温度の上昇を少なくするために,試験箱側面の一部及び底面は開放した構造とする。
3.2) 強制通風型:試験箱内の温度を調節するための換気機構を有する構造とする(1)。
3.3) 密閉型:試験箱の全面をふさぎ,外気が自由に流通できない構造とする。
注(1) :強制通風に伴って外気中の汚染物質を試験箱内に蓄積する可能性があるので注意をする。
4) 試料の上面と試験箱の板ガラス下面との距離が50mm以上ある構造とする。
5) 使用する板ガラスは,JIS R 3202「フロート板ガラス及び磨き板ガラス」に規定するフロート板ガラスとする。板厚は,通常,3mmとするが,風圧,積雪,降ひょうなど,その地域の気象条件によって定める。ただし,3mm以外の板厚の板ガラスを使用した場合は厚みを明記する。
6) 一般的に,使用する板ガラスは,平らで均一透明な欠陥のないもので,可視域を含む波長370nm~830nmの範囲の分光透過率が約90%,波長310nm以下の分光透過率が1%以下の板ガラスが望ましい。
7) 板ガラスの使用期間は,通常,2年とする。
8) 他の種類のガラス,又は窓用プラスチック材料は,受渡当事者間の協定によって用いることができる。
9) 板ガラスは,弾性シーラント,又はガスケットを用いて試験箱にはめ込み,雨,雪及び漏水の影響が試料に生じないような構造とする。
b) 試料は,試験箱の側壁による日射を遮らない位置に取り付ける。
c) 暴露試験期間中は,板ガラスの面を常に清浄にしておく。
d) 暴露試験期間中は,必要に応じて試験箱内の温度,相対湿度及び太陽放射光の露光量を測定する。
遮へい暴露試験方法
この試験方法は,遮へい構造物の下,若しくは中,又は屋内に試料の一部,又は全部を設置して,日照,雨,雪,風などの直接的な影響を避けた状態で暴露し,試料の化学的性質,物理的性質,及び性能の経時変化を調査する暴露試験方法である。
大気暴露試験の場合には,大気汚染物質,腐食生成物などが試験片上にたい(堆)積したり,それらが降水によって流されないようにするため,遮へい物で覆った暴露試験が必要になることもある。この場合は,対象となる環境因子に対する暴露試験の目的によって,遮へい構造物の構造,及び大きさを設計する。
ただし,暴露試験場で,付近に設置されている暴露試験装置に取り付けられた試料に,日照,通風などを妨げないように適切な処置をとる。
a) 遮へい暴露試験に用いる試験装置は,次による。
1) 遮へい暴露試験装置は,試料を日照,雨,雪,風などの一部,又は全部の直接的な影響から遮断できる構造とする。
2) 遮へい暴露試験装置の型式は,次の3種類とし,遮へい暴露試験の目的,試料の種類などに応じて定める。
2.1) 自然通風型:外気が自由に流通できる構造とする。
2.2) 通風制御型:特定方向からの外気の流通を遮断できる構造とする。
2.3) 密閉型:外気が自由に流通できない構造とする。
b) 試料が,風,振動などによって,移動したり破損しないように保持できる構造とする。
備考:必要に応じて,遮へい暴露試験装置の下又は中の温度及び相対湿度を測定することが望ましい。
ブラックボックス暴露試験方法
この試験方法は,内外面とも全面に黒色処理を施した底のある金属製試験箱の上面に試料を取り付けて暴露試験を直接行い,試験箱の蓄熱効果に伴う温度上昇によって試料の化学的性質,物理的性質,及び性能の変化を促進させ,その経時変化を調査する暴露試験方法である。
この試験方法は,太陽放射光によって高温になる建物の屋根,自動車などの部位に使用される材料及び製品の暴露試験方法として有効である。
a) ブラックボックス暴露試験方法に用いる試験装置の型式は,次の2種類とする。
1) 上面開口型:試験装置は,次による。
1.1) 上面を開口面とし,他の5面は黒色処理を施した金属製試験箱で,開口した上面(暴露試験面)に試料を取り付ける機構を備えた構造とする。
1.2) 金属製試験箱の下部に,小さな水抜きの孔がある構造とする。
1.3) 試料を暴露する開口面の寸法,及び試料の取付け方法は,暴露試験の目的に応じて定める。
1.4) 試料が開口部の全面を満たさない場合は,残りの開口部を黒色処理した金属板でふさぐ。
2) 全面密閉型 試験装置は,次による。
2.1) 6面の内外面とも全面に黒色処理を施した金属製試験箱で,その上面に試料を直接取り付ける機構を備えた構造とする。
2.2) 試験箱の下部に,小さな水抜きの孔がある構造とする。
2.3) 試験箱の上面(暴露試験面)を除く5面の内側に保温材を張りつけた構造のものを用いてもよい。
b) 上面開口型のブラックボックス暴露試験装置を使用する場合は,次による。
1) 開口部全面に隙間が生じないように,試料を取り付ける。
2) 開口部が残った場合は,黒色処理を施した金属板を取り付けて,開口部に空きがないようにする。
3) 試料の表面温度を測定する。
備考:金属製試験箱の内部の相対湿度を測定することが望ましい。
c) 全面密閉型のブラックボックス暴露試験装置を使用する場合は,次による。
1) 試料の裏面が密接するように試験装置の上面に取り付ける。
2) 試料の表面温度を測定する。
太陽追跡集光暴露試験方法
この試験方法は,太陽放射光の光軸方向を垂直に追跡し,フレネル反射鏡を用いて太陽放射光を反射集光した部位に試料を取り付け,集光した太陽放射光によって試料の化学的性質,物理的性質,及び性能の変化を促進させ,その経時変化を調査する暴露試験方法である。
フレネル反射鏡を用いた太陽追跡集光暴露試験は,乾燥した天気のよい年間3500時間以上の日照時間があり,年間の日中の平均相対湿度が30%以下の場所で行うのが最もよい。
この試験を実施するための最低条件は,太陽に垂直な面での直達日射(注2)と全天日射(注3)との比率を0.8とする。
注(2) 太陽光線に垂直な面に入射する直達太陽放射照度。
注(3) 単位時間,単位面積当たりに,面に入射する全太陽放射照度。
相対湿度の高い地域,浮遊粒子の多い地域など,太陽放射光の散乱光が多い地域では,紫外線域の放射光が天空へ散乱されるため,試料の照射位置に紫外線を集中する効率が大きく減少し,促進倍率は大きく減少する。
この試験方法による促進倍率は,乾燥した砂漠地帯及び海抜の高い地域で実施されたとき,最も大きくなる。
a) 太陽追跡集光暴露試験に用いる試験装置の構造及び取扱いは,次による。
1) 太陽放射光の光軸を垂直に自動的に追跡する機構を備え,試料取り付け照射面に太陽放射光を反射集光するための10枚の平らな鏡からなるフレネル反射鏡,及びその照射面に試料取り付け機構を備えた構造とする。
2) フレネル反射鏡は,試料取り付け照射面の試料に太陽放射光が均一に反射するように,試料照射面を中心とする放物線面の接線方向と平行に配置する。
3) フレネル反射鏡は,295nm~750nmの紫外域及び可視域の波長域で高い分光反射率を保持し,310nmの波長での分光反射率が65%以上でなければならない。また,試料取り付け照射面に集光された太陽放射光の露光量のばらつきが,5%以下になるように調節できなければならない。
4) 試料取り付け照射面は,フレネル反射鏡による太陽放射光を集光する中心に位置し,その有効照射面積は,使用される一枚の反射鏡の面積よりわずかに小さいものとする。
5) 反射鏡部には,最小25mm角の大きさの取り外しができる分光反射率モニター用の反射鏡を取り付ける場所を備えた構造とする。
6) 試料取り付け照射面を温度調節できる空冷機構を備えた構造とする。
7) 暴露試験中の試料に水噴霧が規定のサイクルで行える機構を備えた構造とする。
8) 配水管などのすべての材料は,水を汚染させないような材質のものでなければならない。
b) 試料は,試験装置が回転しても,移動又は脱落しないように取り付ける。
c) 試料の表面温度を測定する。
d) 試料に照射された反射光の特定波長域の太陽放射光の露光量を測定する。
e) 太陽放射光の光軸を常に垂直に追跡することができるように,試験装置を維持管理する。
f) フレネル反射鏡は,常に清浄な表面を保持するように管理する。
g) 材料及び製品が熱劣化を起こす温度以上に過熱されない範囲内に,試料の表面温度を制御する。
h) 水噴霧の有無,及び噴霧条件は,暴露試験の目的によって定める。試料に噴霧する水は,シリカ含有量0.01mg/l以下,全固形物の含有量20mg/l以下でなければならない。水は,蒸留,又はイオン交換などによって脱ミネラル処理をすることが望ましい。
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