化 学 第四部:化学反応

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 ここでは,酸化還元反応の理解に資するため, 【酸化還元反応の基礎】, 【酸化に注目した反応式の見方】, 【半反応式:電子のやり取り】, 【製鉄:還元に注目した反応例】 に項目を分けて紹介する。

  酸化還元反応の基礎

 酸化還元反応( oxidation-reduction reaction )
 反応物から生成物が生じる化学反応において,原子間での電子の授受のある反応である。
 化学反応が酸化還元反応か否かをどうやって判断するのか? 一般的には,反応に関わる元素の酸化数の増減を求めることで判断している。
 
 ここでは,アンモニア( NH3 )と塩化水素( HCl )の反応を例に,酸化還元反応か否かの評価方法を紹介する。
      NH3 + HCl → NH4Cl
 反応に関わる元素の酸化数は,基本となる水素の酸化数を ( +1 ) として,化合物の酸化数の総和が 0 となるように,反応物の窒素( N )の酸化数 X ,塩素( Cl )の酸化数 Y を求める。
 NH3 (g) の酸化数は, X + ( +1 ) × 3 = 0 ,すなわち窒素の酸化数 X = -3 となる。
 HCl (g) の酸化数は ( +1 ) + Y = 0 ,すなわち塩素の酸化数 Y = -1 とななる。
 
 次いで,生成物である塩化アンモニウムを構成する窒素( N )の酸化数 X' ,塩素( Cl )の酸化数 Y' を同様の手順で求める。
 なお,塩化アンモニウムは,水溶液中でアンモニウムイオン( NH4 )と塩化物イオン( Cl )に電離している。
 原則として,単原子イオン( Cl )の酸化数はイオンの価数と一致するので,塩素の酸化数 Y' = -1 となる。
 アンモニウムイオンの酸化数とイオンの価数には, X’ + ( +1 ) × 4 = +1 の関係が成立するので,窒素の酸化数 X' = -3 となる。
 
 以上より,アンモニア( NH3 )と塩化水素( HCl )の反応は,反応物と生成物を構成する原子の酸化数に変化が無い,すなわち原子間での電子の授受が無い。従って上述の化学反応は,酸化還元反応ではないと判断される。
 次には,酸化に注目した酸化還元反応式の見方,還元に注目した酸化還元反応式の見方を紹介する。

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  酸化に注目した反応式の見方

 炎を上げて激しく反応するので,分かりやすい化学反応の例として学生実験などで取り上げられることの多いナトリウム金属( Na )と水( H2O )の反応を例に紹介する。
 化学反応式(酸化還元反応式)は次の通りである。
      2Na (s) + 2H2O (l) → 2NaOH (aq) + H2 (g)↑
 なお,生成物である水酸化ナトリウムは,強塩基で水中ではほぼ完全にイオンに解離するので,次式でも表される。
      2Na (s) + 2H2O (l) → 2Na (aq) + 2OH (aq) + H2 (g)↑
 備考:式中の( )は,物質の状態,すなわち s は固体,l は液体,g は気体,及び aq は水和を意味する。
 
 各元素の酸化数
 酸化数の決め方は次の通りである。
 ① 単体の酸化数は 0 とする。
 ② 化合物中の酸素( O )の酸化数 -2 ,水素( H )の酸化数 +1 とする。
 ③ 単原子イオンの酸化数は,イオンの価数に等しい。
 ④ 化合物を構成する原子の酸化数の総和は 0 になる。
 ⑤ 多原子イオンの酸化数の総和は価数に等しい。
 この条件を適用した時に,上記反応式の各元素の酸化数変化は次式で表される。なお,元素の後の( )は酸化数を示す。
      2Na (0) + 2H (+1) 2O (-2) → 2Na (+1) O (-2) H (+1) + H (0) 2
 
 酸化,還元の関係
 また,この反応では,ナトリウム元素は金属の酸化数 0 から水酸化ナトリウムの酸化数 +1酸化数が増加し酸化されたことを示す。
 水素元素は水の酸化数 +1 から水素ガスの酸化数 0 酸化数が減少し還元されたことを示す。
 従って,この反応は,「ナトリウム金属は酸化されて水酸化ナトリウムになり,水(厳密には,水分子中の水素)は還元されて気体の水素になる。」と表現される。
 また,水とナトリウム金属の関係は,はナトリウム金属を酸化する酸化剤ナトリウム金属は水を還元する還元剤の関係にある。

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  半反応式:電子のやり取り

 ナトリウム金属( Na )と水( H2O )の反応を電子のやり取りを含めて表現する。この表現では,酸化と還元を分けて記述すると理解しやすい。この記述方式を半反応式( half reaction )と呼ぶ。
 半反応式は,電子の授受を扱う電気化学(electrochemistry)では一般的な記述法である。
 
      2Na (s) + 2H2O (l) → 2NaOH (aq) + H2 (g)↑
 この反応を半反応式で表すと次のようになる。
 酸化されるナトリウム金属については,電子を放出してナトリウムイオンになる半反応式は次のように記述する。
      2Na(s) → 2Na(aq) + 2e
 一方,還元される水については,「酸塩基反応」などで紹介したように,水の自己解離を考慮し,生成したヒドロニウムイオン(オキソニウムイオンの一種)が電子を受け取り,原子状の水素を経て気体水素になると考えられるので,半反応式は次のように記述される。
      4H2O(l)+2e ⇆ 2OH(aq)+2H3O(aq) + 2e → 2OH(aq)+2H2O+H2(g)↑

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  製鉄:還元に注目した反応例

 鉄鉱石から鉄鋼を得て生活に利用することで,近代文明が築かれてきた。鉄鋼の原料は,酸化鉄を主成分とする赤鉄鉱( Fe2O3 )や磁鉄鉱( Fe3O4 )である。
 なお,日本古来の刀の制作に用いる玉鋼(和銑)は,砂鉄を原料としている。砂鉄は,磁鉄鉱等が風化して河川で運ばれたもので,四酸化三鉄( Fe3O4 )を主成分とするものである。
 酸化鉄を還元して,鉄鋼の原料である銑鉄( pig iron )を得る工程を製銑( smelting of pig iron )という。
 製銑過程では,鉄鉱石から作った焼結鉱とコークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)を高炉の内部に層状に積み重ね,炉の下部から熱風(約 1,200 ℃)を吹き込むみ,コークスの燃焼・分解で生じた高温の一酸化炭素,水素,及び炭素により酸化鉄が順次還元される。
 この過程で起きている主な反応は次のように考えられている。
 
 コークスの燃焼(炭素の酸化)による一酸化炭素の生成
      2C + O2 → 2CO
 この反応の電子の授受は,
      2C → 2C2+ + 4e-  , O2 + 4e- → 2O2-
 この他に,C + O2 → CO2 , CO2 + C ⇆ 2CO の反応も起きている。
 
 鉄鉱石の還元による鉄の生成
 酸化鉄(Ⅲ)(酸化第二鉄,ヘマタイト Fe2O3 )の還元による鉄( Fe )の生成は,多段階を経て起きる。
 1)酸化鉄(Ⅲ)が四酸化三鉄( Fe3O4 )に還元される。(比較的低温 320 ℃~ 620 ℃)
 この過程では,一酸化炭素(還元剤)が酸化され二酸化炭素になる。
      3Fe2O3 + CO → 2Fe3O4 + CO2
      鉄の酸化数:( +3 ) → ( +2 ) , ( +3 )   Fe3O4 = Fe(+2)O・ Fe(+3)2O3
      炭素の酸化数:( -2 ) → ( -4 )
 2)四酸化三鉄が酸化鉄(Ⅱ)(酸化第一鉄,ウスタイト FeO )に還元される。( 620 ℃~ 950 ℃)
 この過程では,一酸化炭素(還元剤)が酸化され二酸化炭素になる。
      Fe3O4 + CO → 3FeO + CO2
      鉄の酸化数: ( +2 ) , ( +3 ) → ( +2 )
      炭素の酸化数:( -2 ) → ( -4 )
 3)酸化鉄(Ⅱ)が鉄( Fe )に還元される。( 950 ℃~ )
 この過程では,一酸化炭素(還元剤)が酸化され二酸化炭素になる。
      FeO + CO → Fe + CO2
      鉄の酸化数: ( +2 ) → ( 0 )
      炭素の酸化数:( -2 ) → ( -4 )

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