化 学 第四部:化学反応

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 化学反応の分類には,立場の違いを反映した様々な分類がある。中には発見者にちなんで命名された反応,試薬名を冠した反応などの分類もある。
 ここでは,用途を意図した分類として 【加水分解,脱水反応】, 【付加重合,縮合重合】, 【酸化還元反応,中和反応】, 【光反応,重合反応】 に項目を分けて紹介する。

  加水分解,脱水反応

 加水分解( hydrolysis )
 水分子( H2O )と反応し,反応物が分解した生成物を得る反応である。このとき水分子は,H と OH に分割されて生成物中に取り込まれる。
 反応例
 ● 油脂又はエステルから石けんを生成する鹸化(けんか;saponification )は,アルカリによりグリセリンと高級脂肪酸塩に分解する加水分解反応である。
 ● カルボン酸誘導体( R–CO–Y )が求核剤( Nu : nucleophile )と反応し,別のアシル化合物に変わる求核アシル置換反応( nucleophilic acyl substitution ; NAS )というが,求核剤に水を用いた場合の反応は加水分解反応ともいう。
 ● 食物として摂取した中性脂肪とも呼ばれる単純脂質は,小腸において,消化酵素ステアプシン(リパーゼ)による加水分解により,グリセリン(グリセロール),脂肪酸,及びモノグリセリドなどに分解される。
 
 脱水反応( dehydration reaction )
 ヒドロキシ基( hydroxy group ) を持つ化合物(アルコール類やカルボン酸など)において,分子内,又は分子間から水分子( H2O )が脱離しながら進行する反応である。
 脱水反応には,1つの分子から水分子が離脱しアルケンが生成する分子内脱水反応と 2つの分子から水分子が離脱する分子間脱水反応がある。次には,アルコールの関与する脱水反応を紹介する。
 アルコールの反応例
 分子内脱水反応(アルケンの生成)
       RCH2 - CH(OH)-R' → RHC=CHR' + H2O
 分子内脱水などの脱離反応( elimination reaction )では,結合している水素原子数の少ない方から水素原子が失われる。これをザイツェフ則( Saytzeff's rule )という。なお,上式の水素原子数は,RCH2 < R’ の場合である。
 分子内脱水によるアルケンの実用的生成方法には,アルコールの反応で紹介する複数の過程がある。


 分子間脱水反応(エーテル・エステルの生成)
 エーテルの合成
       ROH + R'OH → R-O-R' + H2O
 一般的には,同一種の 2分子( R=R' )同士での脱水反応が起こり,対称なエーテル(単一エーテル)が生成する。異なる種類の 2分子( R≠R' )間の脱水反応により非対称なエーテル(混合エーテル)を合成したい場合には,一般的にはウィリアムソンエーテル合成( Williamson ether synthesis )が用いられる。  
 エステルの合成
 エステルは,有機酸や無機酸のオキソ酸と,アルコールやフェノールのようなヒドロキシ基を含む化合物との脱水縮合反応で得られる化合物である。一般的には,カルボン酸( RCOOH )とアルコール( R'OH )から成るカルボン酸エステル( carboxylate ester )を指すことが多い。
       RCOOH + R'OH → RC(O)-O-R' + H2O
 カルボン酸と過剰量のアルコールを酸触媒で反応させてエステルを合成する方法は,ドイツの化学者エミール・フィッシャー( 1852~1919 )にちなんでフィッシャーのエステル化反応( Fischer esterification )と呼ばれる。この反応では,酸触媒でプロトン化したカルボニル基にアルコールが求核付加する。次いで,プロトンの移動により,水が脱離してエステルが生成する。すべての段階が可逆な平衡反応のため,実用的な合成では過剰量のアルコールが用いられる。

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  付加重合,縮合重合

 付加重合( addition polymerization )
 二重結合や三重結合を持った不飽和化合物が,前節の【反応機構の分類】で紹介した付加反応により,次々と重合(ポリマー)する反応を付加重合と呼ばれる。繰返しの付加過程は,水又はその他の簡単な分子の脱離を伴うことなく行われる。
 エチレンからポリエチレン,プロピレンからポリプロピレン,塩化ビニルからポリ塩化ビニルなどのビニル樹脂の製造で用いられる化学反応である。
 付加重合の中で,不飽和結合や環状構造の官能基を 2個以上もつ化合物と分子の両末端に活性水素をもつ化合物が,付加反応を繰返しながら重合体を生成する反応を重付加( polyaddtion )と呼ぶ。
 重付加は,ポリウレタンエポキシ樹脂製造に用いられる水素移動型重付加,環状ポリオレフィン樹脂の製造で用いられるペリ環状反応で多重結合を次々と付加反応する電子移動型重付加とに分けられる。
 
 縮合重合( condensation polymerization ,polycondensation )
 縮合重合は,重縮合,縮重合とも呼ばれ,複数の化合物が,互いの分子内から水( H2O )などの単純な化合物を脱離しながら重合する反応である。
 縮合重合で製造されるポリマーには,ナイロン(ポリアミド樹脂),ペット(ポリエステル樹脂),ポリカーボネート樹脂フェノール樹脂メラミン樹脂などがある。なお,生成物の構造には,線状のものと網目状のものがある。

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  酸化還元反応,中和反応

 酸化還元反応( oxidation-reduction reaction )
 酸化( oxidation )
 物質(原子)が電子を失うことであり,単体のときより電子密度が低くなった状態である。失った電子の数を正 ( + ) の酸化数とする。注目している物質が電子を失い酸化する化学反応を酸化反応という。
 経験的には,物質に酸素が化合する反応(鉄の酸化)や物質から水素が奪われる反応などがこれにあたる。
 還元( reduction )
 物質(原子)が電子を受け取ることであり,単体のときより電子密度が高くなった状態である。受け取った電子の数を負 ( - ) の酸化数とする。 注目している物質が電子を受け取り還元する化学反応を還元反応という。
 経験的には,物質から酸素が奪われる反応や物質が水素と化合する反応(鉄の酸化との対反応で,酸素が水酸化物になる反応)がこれにあたる。
  酸化還元反応( oxidation-reduction reaction )
 化学反応としては,「酸化反応」と「還元反応」に分けられるが,両反応は同時に進行する。このため,両反応をまとめて酸化還元反応として扱うのが一般的である。
 反応の詳細や具体的な例については,別に項目を立てて,【酸化還元反応】で紹介する。
 酸化還元反応は,酸化される物質が電子を放出する反応(酸化反応),還元される物質が電子を受け取る反応(還元反応)に分けられる。酸化反応と還元反応を,それぞれを出入りする電子を含んだ形で式化したものを半反応式半電池式という。
 金属の腐食科学では,それぞれの半反応が金属表面の異なる場所で同時に起きる。このため,電極アノードとなる箇所で起きる金属の酸化反応をアノード反応といい,電極カソードとなる箇所で起きる酸素などの還元反応をカソード反応ともいう。
 
 中和反応( neutralization )
 酸と塩基から塩を形成する化学反応で,酸・塩基反応ともいう。ほとんどの場合,同時に水が生成する反応である。例えば,【配位結合】で紹介するアレニウスの酸と塩基の中和反応は,水と金属塩を生成する反応である。
 なお,中和反応と称しているが,酸と塩基の化学反応を示すのみで,結果として水素イオン濃度指数 pH が 7 付近になる反応であることを保証するものではない。
 中和反応の詳細や具体的な例については,別に項目を立てて,【酸・塩基反応】で紹介する。

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  光反応,重合反応

 光反応( photoreaction )
 光のエネルギーにより引き起こされるさまざまな化学反応を総称して光反応という。
 化学物質は,その物質に固有の電磁波(光)を吸収し,励起状態と呼ばれる反応活性の高い状態に変わる。その励起状態から緩和する過程で,結合,解離,発光,酸化,還元などの様々な化学変化が起きる。なお,光(電磁波)の影響を受けない反応を暗反応という。
 身近には,大気成分の太陽光による光反応(光化学オキシダント,生化学分野の光合成における光反応(色素分子が光エネルギーを吸収し,物質の酸化還元)などを光化学反応( photochemical reaction ,light‐dependent reaction )と称する場合が多い。
 
 重合反応( polymerization reaction )
 重合体(ポリマー; polymer )の合成を目的にする化学反応の総称である。
 上述の付加重合,縮合重合など汎用的な方法の他に,元となる反応の反応機構反応種の違いにより,連鎖重合(連鎖反応),逐次重合,リビング重合,ラジカル重合,イオン重合,カチオン重合,アニオン重合,配位重合,開環重合など数多くの分類があり,高分子合成に利用されている。

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