JIS Z 2382(その5)

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JIS Z 2382:1998「大気環境の腐食性を評価するための環境汚染因子の測定」

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 【ウェットキャンドル法による塩化物の測定】
 【原理】
 一定面積の織物を湿潤状態で雨を遮断して暴露すると,織物表面に塩化物が捕集される。この塩化物を化学分析によって定量する。
 分析結果から塩化物の付着度を計算し,平方メートル・日当たりのミリグラム[mg/(m2・d)]で表す。
 
 【測定装置】
 ウェットキャンドル
 ウェットキャンドルは,次のとおり作製する。
 a) ウェットキャンドルは,瓶の中に挿入した心棒から構成される。
 b) 心棒は,不活性材料(ポリエチレンなど)製の直径約25mm,長さ150mm以上のもの。
 c) 瓶は,容積500ml以上のポリエチレン製,又は他の不活性材料製のもの。
 d) ゴム栓は,c)の瓶の首にはめられる大きさのもので,中央部にb)の心棒を挿入する孔,及びその孔の周辺にガーゼのフリーの端が通る二つの孔をもち,三つの孔の縁はすべてじょうご状であるもの。
 e) 心棒を,長さ約120mmを残してゴム栓に差し込む。このとき暴露される心棒の表面積は約100cm2である。
 f) この心棒の約120mmの部分に,蒸留水で塩化物をよく洗浄し乾燥した管状の外科用ガーゼ,又は帯状の外科用ガーゼを2層に巻き付け,残りのフリーのガーゼの端をゴム栓の孔に通す。
 ガーゼは,管状のものは,約120mmを残して長さ方向に沿って二つに切断し,切断した部分が瓶の底に達する長さのものを用いる。また,帯状のガーゼは,約120mmの部分に2層に巻き付けた残りがゴム栓を通して瓶の底に達する長さのものを用いる。
 g) 瓶に,200mlのオクタン酸を加えたグリセリン溶液[20%(v/v)]を入れる。
 このグリセリン溶液は,200mlのグリセリン[CHOH(CH2OH) 2]を蒸留水で1000mlにし,この溶液に20滴のオクタン酸(C8H16O2)を加える。オクタン酸を加えるのは,アスパーギラスニガーのような菌類の成長を妨げるためである。
 長期的に極端な温度,すなわち25℃以上とか−25℃以下といった状況では,凍結や過剰な蒸発を防ぐため,グリセリン濃度を40%(v/v)まで高めるか,グリセリン溶液を20% (v/v)のエチレングリコール溶液に置換する必要がある。
 h) グリセリン溶液の入った瓶g) に,d) のゴム栓をして,ウェットキャンドルを組み立てる。
 
 暴露架台
 暴露架台は,次のとおりとする。
 a) 直射日光,雨を避けるための屋根,及びウェットキャンドルを暴露する支持台で構成される。
 b) 支持台は,ウェットキャンドルの先端が屋根から約200mmの位置に,瓶と地表との距離が少なくとも1m になるように取り付ける。
 c) 暴露架台の材質は,耐食性のよいものを用いる。
 
 【ウェットキャンドルの暴露】
 ウェットキャンドルの暴露は,次のとおり行う。
 a) 暴露架台の支持台に垂直に取り付け,固定する。
 b) 暴露期間は1か月とし,通常,各月の1日に暴露を開始し翌月の1日に回収する。
 c) 暴露を終了したウェットキャンドルは,心棒のガーゼを取り外し瓶の中に入れるとともに,心棒及びゴム栓の孔の内面を蒸留水で洗浄し,洗浄液を瓶の中に入れて密栓をして分析するまで保管する。
 瓶中の溶液が分析用試料となる。瓶には,暴露場所の名称,暴露開始及び終了日を記録する。
 
 【塩化物の分析】
 塩化物の分析は,通常,次のとおり行うが,「ドライガーゼ法」の方法で行ってもよい。
 原理
 試料中の塩化物の量は,ジフェニルカルバゾン・ブロモフェノールブルー混合指示薬を用いて,水銀化合物溶液滴下法によって決定される。滴定の終点はpH2.3~2.8の範囲で,ジフェニルカルバゾン第二水銀の青紫色錯塩の形成によって示される。
 
 試薬
 分析には,分析級の試薬及び蒸留水又は同純度の水を使用する。
 a) エタノール95%(v/v)
 b) 硝酸溶液c (HNO3)=0.05mol/l
 3mlの硝酸(ρ=1.40g/ml)を水で1000mlに希釈する。
 c) 水酸化ナトリウム溶液c(NaOH):0.25mol/l
 10gの水酸化ナトリウムを水に溶解し,1000mlに希釈する。
 d) 塩化ナトリウム標準照合溶液c(NaCl):0.025mol/l
 塩化ナトリウムを300℃で1時間乾燥する。その1.4613gを水に溶解し,全量フラスコで1000mlに希釈する。
 e) 硝酸第二水銀容量分析用標準溶液c[Hg(NO3) 2]:0.0125mol/l
 4.283gの硝酸第二水銀一水塩[Hg(NO3) 2・H2O]を0.5mlの硝酸(HNO3,ρ=1.40g/ml)を加えて酸性にした50mlの水に溶解する。
 次いで,全量フラスコを用いて水で1000mlに希釈する。必要ならばろ過した後,「分析」の方法で塩化ナトリウムの標準照合溶液[d) ]を用いて,滴定によって正確な濃度を決定する。
 f) 硝酸第二水銀容量分析用標準溶液c[Hg (NO3) 2]=0.00705mol/l
 2.4200gの硝酸第二水銀一水塩[Hg(NO3) 2・H2O]を0.25mlの硝酸(HNO3,ρ=1.40g/ml)を加えて酸性にした25mlの水に溶解する。 次いで,全量フラスコを用いて水で1000mlに希釈する。必要ならば,ろ過した後,「分析」の方法で塩化ナトリウムの標準照合溶液[d) ]を用いて,滴定によって正確な濃度を決定する。
 g) 混合指示薬
 0.5gのジフェニルカルバゾンと0.5gのブロモフェノールブルーを75mlのエタノールa) に溶解し,エタノールで100mlに希釈する。暗色の瓶に入れ,冷蔵庫に保存する。
 
 分析
 分析は,次のとおり行う。
 a) 暴露を終了した瓶中の溶液「“ウエットキャンドルの分析”のc) 」をよくかき混ぜ,定性ろ紙を用いてろ過し,ろ液を試料溶液とする。
 b) あらかじめ硝酸第二水銀容量分析用標準溶液「“塩化物の分析”のe) 」を用いて予備滴定によって,試料溶液中の塩素イオンの概略の含有量を決定する。
 c) 20mg以上塩素イオンを含まないよう試料から一定量を採取する。
 もし採取した一定量の試料溶液に2.5mg以上の塩素イオンが含まれるときは,硝酸第二水銀容量分析用標準溶液「“塩化物の分析”のe) 」を用いて滴定を実施する。
 もし採取した一定量の試料溶液に2.5mg以下の塩素イオンしか含まれないときは,硝酸第二水銀容量分析用標準溶液「“塩化物の分析”のf) 」とマイクロビュレットを用いて滴定を実施する。
 もし一定量が1リットル当たり0.1mg以下の塩素イオンしか含まないときには,適当な量を50mlまで蒸発する。
 d) 採取した試料溶液に,5~10滴の混合指示薬「“塩化物の分析”の g) 」を加える。
 もし青紫色,又は赤色に発色するならば,色が黄色に変わるまで硝酸溶液「“塩化物の分析”の b) 」を滴加する。混合指示薬を加えたとき黄色,又はだいだい(榿)色が現れるならば,水酸化ナトリウム溶液「“塩化物の分析”の c) 」の滴加によって青紫色に発色させ,次いで酸性化する。
 e) 黄色の酸性溶液は全体が青紫色を持続するまで適合する硝酸第二水銀容量分析用標準溶液「“塩化物の分析”のe) ,又はf) 」で滴定する。
 f) 暴露したウェットキャンドルと同時に作製した未暴露のウェットキャンドルについて同様に操作して,ブランク試験を実施する。
 
 表示
 分析結果は,実施した分析方法について,次の式によって計算し,R(Cl)[mg/(m2・d)]又はR(NaCl)[NaClmg/(m2・d)]で表す。
 
   R(Cl)=m/(A⋅t)  
    ここに,R(Cl):塩化物(Cl)の付着度[mg/(m2・d)]
          m:試料溶液中の塩素イオンの全質量 (mg)
          A:暴露ガーゼ表面の面積 (m2)
          t:暴露期間 (d)
 
   R(NaCl)=1.649×R(Cl)  
    ここに,R(NaCl):塩化物(Cl)の付着度[NaClmg/(m2・d)]
         1.649:NaClの式量/Clの原子量
 
 水銀化合物溶液滴定法によって分析した場合は,次の式によって計算する。
 
   R(Cl)=[2(V3-V4)×c2×35.5VT/(VA⋅A⋅t)  
    ここに,R(Cl):塩化物(Cl)の付着度[mg/(m2・d)]
          V3:一定量の試料溶液の滴定に用いられた硝酸第二水銀容量分析用標準液の容量(ml)
          V4:ブランクの滴定に用いられた硝酸第二水銀容量分析用標準液の容量(ml)
          VA:一定量の試料溶液の容量(ml)
          VT:試料溶液の全容量(ml)
          c2:使用した硝酸第二水銀容量分析用標準溶液の正確な濃度(mol/l)
          A:暴露ガーゼ表面の面積(m2)
          t:暴露期間(d)

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