JIS Z 2382(その2)

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JIS Z 2382:1998「大気環境の腐食性を評価するための環境汚染因子の測定」

JIS Z 2382(その1)目次に戻る。

 【二酸化鉛(PbO2)プレートによる二酸化硫黄(SO2)の測定】
 【原理】
 大気中の二酸化硫黄(SO2)は,二酸化鉛と反応して硫酸塩を形成して捕捉される。大気中に所定の期間暴露した二酸化鉛プレートを回収し,二酸化硫黄捕捉程度を決定するためにこの二酸化鉛プレートの硫酸根分析を行い,二酸化硫黄の付着度を平方メートル・日当たりのミリグラム[mg/(m2・d)]で表示する。
 この方法で使用される二酸化鉛試薬は,硫化水素やメルカプタンのような他の硫黄化合物とも反応し硫酸塩を形成することがある。
 二酸化鉛プレートの二酸化鉛の面を地面向きにしてあるのは,酸性雨や硫酸エアゾルからの硫酸の捕捉を最小にするためである。
 
 【測定装置】
 二酸化鉛プレート
 二酸化鉛プレートは,次のとおり作製する。
 a) 円形ろ紙(直径50mm,又は60mm)をポリスチレン製ペトリ皿の底にはり付ける。
 はり付けは,ペトリ皿の底にろ紙の粗面を上にしてろ紙にしわがよらないように,ペトリ皿の内側にはり付けアセトンを注意深く注入し,ろ紙をガラス棒でしっかりと完全に圧着した後,アセトンを蒸発させて行う。
 b) 1バッチのろ紙をはり付けたペトリ皿(以下,プレートという。)は,架台の上に置き,蒸留水,又は脱イオン水ですすぐ。
 再びプレートに蒸留水,又は脱イオン水を満たし,1 時間放置する。プレートから水を注ぎ出し,蒸留水,又は脱イオン水で4分の1から2分の1まで再び満たす。
 c) 3.5gのトラカントゴムと900mlの蒸留水,又は脱イオン水を高速混合機に入れ,低速で2時間混合する。
 d) 混合機の内容物を1リットルビーカーに移し,その溶液の350mlを混合機に戻す。
 パルプ化した3.5gのろ紙を350mlのゴム溶液に加え,混合物が滑らかで均一になるまで,中速で混合する。
 e) これにc)で作製した400mlのゴム溶液を加え,中速で1分間混合する。
 次に,混合機を高速にセットし,112gの二酸化鉛(注1)を加え,2分間混合し,次いで混合機を低速に戻す。
 f) この混合液を,b)の50mmのプレートには10ml,60mmのプレートには15ml,注意深くピペットを用いて注ぐ。混合物はプレートの縁まで均一に流れるようにする。
 g) このプレートの乗った架台を40~50℃にセットした炉内に20時間置き,乾燥する。
 プレートを炉から取り出し,冷却し,次いで,暴露開始までそれらを保護するためにカバーで密閉し,保管する。
 h) プレートは,番号を付け,作製から120日以内に暴露する。
 各バッチから少なくとも3個のプレートをブランク値を求めるために用意する。
 
 注(1) :二酸化鉛粉末の活性度は,品質によって差があるので,活性度を明示した英国D.S.I.R.(Department of Scientific Industrial Research)標準品を使用するとよい。
 
 プレート暴露用架台 プレート暴露用架台は,次のとおりとする。
 a) プレートを逆さ位置(地向き)にしっかりと水平に固定できるもの(図 1 に架台例を示す。)で,大気腐食に対し十分な耐食性をもつ材質であること。
 b) 架台は,暴露したプレートに対し通常の風及び空気の循環を妨げてはならない。
 c) 強風の場合に,プレートが飛ばされないための保持クリップ又は他の防御手段を備えていること。
 
 【プレートの暴露】
 プレートの暴露は,次のとおり行う。
 暴露場所をモニタリングするとき,最低3個のプレートを各暴露期間ごとに使用すべきである。プレートは可能ならば腐食試験片の最低と最高の暴露高さの位置に置く。
 a) プレートを暴露用架台に地面向きに固定し,暴露する。
 b) 暴露期間は1か月とし,通常,各月の1日に暴露を開始し,翌月の1日に回収する。
 c) 暴露終了後,架台から取り外しカバーをして密封し,分析するときまで保管する。このとき,プレートには暴露場所,暴露開始及び終了した日付を記録しておく。
 d) 暴露を終了したプレートの分析は,終了後60日以内に行う。
 
 【二酸化硫黄 (SO2)の分析及び付着度の表示】
 プレートの二酸化硫黄 (SO2)の分析及び付着度の表示は,通常,次によるが,円筒法の方法によってもよい。
 
 原理
 プレートの内容物は取り外され,例えば炭酸ナトリウムの溶液を用いて溶解される。次いで,硫酸塩は,バリウムイオンで沈澱され,比濁法で測定される。
 
 試薬
 分析には,推奨される分析級の試薬だけ及び蒸留水,又は同純度の水だけが使用される。
 a) 炭酸ナトリウム約 50g/l 溶液
 50+0.5gの無水炭酸ナトリウム(Na2CO3)を1000mlの水に溶解する。
 b) 塩酸 (HCl) 溶液 0.7mol/l
 60mlの濃塩酸(ρ=1.19g/ml)を水で1000mlに希釈する。
 c) 塩化バリウム二水塩 5g/l 溶液
 5gの塩化バリウム二水塩(BaCl2・2H2O)を1000mlの水に溶解する。
 d) 硫酸ナトリウム500mgSO42-/lに相当する標準液
 0.740g の無水硫酸ナトリウム (Na2SO4)を1mgまで量り,1000mlのワンマーク全量フラスコにそれを入れ,水に溶解し,マークまで希釈し,よく混合する。
 この標準液1mlには500μgのSO42-を含む。
 
 プレートの分析
 プレートの分析は,次による。
 a) プレートから二酸化鉛とできるだけ多くの繊維状材料を定量的に取り外し,50mlのワンマーク全量フラスコに入れ,これに20mlの炭酸ナトリウム溶液を加えかき混ぜ,さらに,時折かき混ぜながら3時間放置する。
 b) 次いで,100℃の湯浴中で30分間加熱した後,冷却してマークまで水で希釈する。
 c) 定量微細級定量ろ紙を用いて,清浄かつ乾燥した試験管に少なくとも15mlをろ過する。
 d) 直径25mm,長さ150mmの試験管に10.0mlのろ液をピペットで採り,10.0mlの水と5.0mlの塩酸溶液を加え,よく混合して指示薬紙でpHを測定する。pHは2.5から4.0の間でなければならない。これを試料溶液とする。そうでないときはこれを捨て,この操作を繰り返す。
 e) 直径25mlの試験管2本に,それぞれ5.0mlのこの試料溶液をピペットで採り,15mlの水を加える。
 f) これらに,1mlの塩化バリウム溶液を加え,激しくふり混ぜ,濁度測定まで5分間放置する。
 g) 試料溶液の濁度は,500nmでバリウムを含まない溶液を対照液として測定する。吸光度(濁度)の読みは,規定する方法で得られた検量曲線を用いて,硫酸根のマイクログラムに換算する。
 h) 暴露したプレートと同一バッチの未暴露プレートについて,同時に,この分析操作を行い,ブランク値を求める。
 
 検量曲線の作成
 検量曲線は,次のとおり作成する。
 a) 10.0mlの硫酸ナトリウム溶液を,全量フラスコを用いて100mlに希釈する。
 b) 希釈した硫酸ナトリウム溶液の1ml,2ml,3ml,4ml,5ml,10ml,及び15mlを各試験管にピペットで採る。
 c) それぞれを水で20mlに希釈する。
 d) 次に,「プレートの分析」で規定した操作を行い,それぞれの吸光度(濁度)を測定する。
 e) 各溶液の吸光度の読みをそれらが含む硫酸根のそれぞれの質量,すなわち,50μg,100μg,150μg,200μg,250μg,500μg,及び750μgに対し,グラフ用紙にプロットして検量曲線を作成する。
 
 付着度の表示
 次の式によって計算し, R(SO2)[mg/(m2・d)] で表す。
 
  R(SO2 )=[(m1―m0)×16.67]/(A×t×1000)
 
  ここに,R(SO2):二酸化硫黄の付着度 [mg/ (m2・d)]
     m0:未暴露プレートの硫酸根の質量 (μg)
     m1:暴露したプレートの硫酸根の質量 (μg)
      A:プレートの面積 (m2)
      t:暴露期間 (d)

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